Autographic 第二十九話:希望
採血が終わり、看護師さんが廊下のベンチに座っていた母さんを呼びに行く。僕がドアを見ていると母さんが入ってきて、榛沢先生が看護師さんが出した椅子に座るよう言う。母さんがバッグを持ったまま椅子に腰かけると、榛沢先生が話を切り出した。
Autographic 第二十八話:願い
椅子に座ったまま靴下を脱ぎ、診察台に上がって仰向けに寝ていると、横に来た榛沢先生が僕の足首を触診し始めた。
「痛いっ!」
ズキンとする痛みに思わず声を出してしまったが、先生は気にする素振りも見せずに触診を続 ...
Autographic 第二十七話:病院
朝、目を覚ますと鮭を焼く良い匂いが漂ってくる。眠い目を擦りながら布団から抜け出し、匂いを辿りながら居間へ行くと、おじさんが囲炉裏で味噌汁を作っていた。
「おう秀人、起きてきたか」
「おはよう、おじさん」
Autographic 第二十六話:困惑
「おじさん、思い出したよ! ロボは三年前の夏、両神山で怪我してた子犬だったんだ!」
おじさんは思い出すような顔をしながら助手席に座る僕の顔を見つめ、再び正面を見ながら口を開いた。
「あ~、あのとき拾った子犬か ...
Autographic 第二十五話:記憶
博物館の前にある土産物屋の横へ行き、木に繋いであった犬たちを駐車場に連れて行こうとすると、三匹の犬がいない。きっとおじさんが連れていったんだろうと思い、一人で駐車場へ向かった。
階段を降りながら料金所を見ると、おじさん ...
Autographic 第二十四話:ロミオ
「アラスカの州都、ジュノーという街の郊外で実際にあった話なんだけど、湖が凍った冬に、メンデンホール湖の氷上を散歩してた夫婦の目の前に大きな黒い狼が現れて、連れていた犬が狼に近寄っていっちゃったのが始まりよ。お互い唸り声をあげて睨 ...
Autographic 第二十三話:絶滅
お守りをジーンズのポケットにネジ込み、神楽殿の横を通って参道を進む。参道は、両脇に生い茂る多くの木から漏れる光が、所々木漏れ日を作っている。痛い脚を引きずりながら、ニホンオオカミの毛皮を見るため僕は急ぎ足で歩く。
緩や ...
Autographic 第二十二話:神域
小学校三年生のとき、秋の旅行で来た三峯神社。犬たちを店の横にある木に繋ぎ、おじさんの後を歩いてお土産に木刀を買った鳥居前の土産物屋に入っていくと、あの時ここで、友達みんなで味噌おでんを食ったことを思い出してしまう。
そ ...
Autographic 第二十一話:眷属
僕は新井さんの姿が見えなくなるまで手を振り続けたが、車がカーブを曲がったところで大きく深呼吸して山の空気を吸い込んだ。
窓を閉めて午後の日差しが降り注ぐ空を見ていると、隣からおじさんの声が聞こえてくる。
「 ...
Ci vediamo
あの娘は陽だまりの中にいた
はじめて見たとき、この娘は大丈夫だと感じて面接前に採用を決めてた女の子
陽だまりの中の娘は仕事が決まって去っていく
大都会の片隅に引っ越すそうだけど、ひとつだけ忠告してお ...
