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Autographic 第二十八話:願い

創作長編小説

 椅子に座ったまま靴下を脱ぎ、診察台に上がって仰向けに寝ていると、横に来た榛沢先生が僕の足首を触診し始めた。

「痛いっ!」

 ズキンとする痛みに思わず声を出してしまったが、先生は気にする素振りも見せずに触診を続けている。

「うん、骨折はしてなさそうだね。思ったほど腫れてもないし、軽い捻挫だろう。一応レントゲンを撮って骨の状態を診てみましょう」

 榛沢先生にレントゲン室へ行くように言われたので起き上がって靴下と靴を履き、診察室を出て廊下のベンチに座っている母さんに行先を伝え、僕は看護師とともにレントゲン室へ向かった。

 重い鉄の扉が開き、中へ入って診察台に寝ているうちにレントゲン撮影は終了。本当に何度やっても、放射線が体を通り抜けているのが信じられない。科学的な説明を聞いたこともあるが、放射線が体を通り抜けるのが実感できないため、体内の画像を見る度に不思議に思う。

 診察台から降りたときにレントゲン技師から診察室へ戻るよう言われたので、レントゲン室を出て榛沢先生の診察室へ向かい、診察室の前のベンチに座って雑誌を読んでいた母さんの隣に座った。

「レントゲン、あっという間に終わっちゃったよ」

 母さんにレントゲン撮影が終わったことを伝えて雑談していると、看護師さんが出てきて診察室に入るよう言われたので、立ち上がって診察室へ入と榛沢先生がレントゲン撮影された写真を見ており、椅子に腰かけた僕に説明しはじめた。

「骨折はしてないし軟骨にも損傷はないね。湿布を貼って冷やしておけば、一週間くらいで腫れてるのは治るでしょう。これから採血して病理検査に回すんで、今日から検査入院してもらうよ」

 ――やっぱり入院するのか。分かってたとはいえ、病院での生活が始まると思うと気が滅入ってくる。僕は気になっていることを、率直に尋ねてみた。

「先生、退院するまでどれくらいかかりますか?」

「検査結果次第だね~。状態が良くなってれば退院だし、悪ければ病気を治すためにしばらく入院してもらうかな」

 やっと小鹿野へ行って鹿猟にも連れて行ってもらったのに、また入院してゴローやハナと遊べなくなるなんて嫌だ。それに、ロボもおじさんの家に連れてきた。三年前、両神山で怪我をしてた子犬。家に連れ帰り飼おうと思ってたのに逃げてしまったロボ。再び会えるとは思ってなかったんだし、今度こそ家に連れて帰って飼いたい。

「さあ、採血するから袖を捲って腕を出してね~」

 楽しかった小鹿野での数日間と、ロボとの再会を思い返していた僕は、榛沢先生の言葉にハッとし慌てて左袖を捲り腕を出した。

 榛沢先生の横に立っていた看護師さんが僕の腕にゴムチューブを巻き、肘の内側付近の血管を探っている。看護師さんは採血用の注射器を右手で取り、青く浮き出た血管に狙いを定めて針を刺す。

 チクッとした痛みと共に、ドロドロした赤い血が噴き出すように出てくる。何回も血を抜かれ見慣れた光景だとはいえ、赤い血を見ていると昨日の鹿の死を思い出し、自分の人生を重ねてしまいそうになる。でも、白血病を直さなきゃロボを飼うなんてできないし、ゴローやハナたちとも遊べない。おじさんの家に行って釣りをしたり山登りをするには、病気を治さなきゃできないことばかりだ。

(白血病なんか早く治してロボを迎えに行くんだ!)

 流れ出てくる赤い血を眺めながら、僕は鹿が死んでいく様子を頭から消し去り、生きてロボを迎えに行くことを考えるようにした。

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