創作長編小説

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創作長編小説

 空っぽのまま生きてる屍のような今の僕には、どんな慰めの言葉も気分転換も無意味だ。明日の放射線治療も投薬治療も、僕の心を前向きにすることはない。僕の体はこのまま衰え、死に向かってひた走っているんだから。

「大舘さ~ん、検温 ...

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創作長編小説

 中学三年生になったばかりなのに、僕は急性骨髄性白血病と診断され入院している。このところ目眩がしてたし、毎日のように体もだるい。先月、体育の授業中に貧血を起こして倒れてしまい、保健室の先生に病院へ行くよう言われ、帰宅して母と共に病院へ ...

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神様の贈りもの

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 夢で見るだけだと思っていた光と声が、なぜ真昼の店内に出現したのか分からない。だから混乱した。光の中から人が現れ、しかもあの声が「仲良くしろ」と、今まで見た夢とは違うことを言ったのだ。

 でも俺はすぐ、この篠塚由樹という女 ...

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神様の贈りもの

創作長編小説

 課長の配慮で二月から店舗で勤務することになったが、やっぱり体を動かして働いてると嫌なことを思い出す機会が少ない。本部でデスクワークをしてるより精神的に楽だし、なにより自分で売り場を作るのが楽しいし商品が売れると励みになる。最初は本部 ...

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神様の贈りもの

創作長編小説

 途中でコンビニに立ち寄り弁当でも買おうと思ったが、どうにも食欲が湧いてこない。まあいい、腹が減ったらファミレスにでも行けば済むことだ。そのままアパートの駐車場まで行き、出入口横の自動販売機で缶コーヒーを二本買い、部屋戻った。 ...

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神様の贈りもの

創作長編小説

 俺の涙で濡れた離婚届の上に理恵子の涙が重ねて落ち、二人の署名が滲んでいく。その離婚届を理恵子が拾い、代わりに通帳や印鑑を置き、頬を涙で濡らしたまま無言で部屋から出ていった。理恵子の後ろ姿を目で追いながら、心に空いたブラックホールのよ ...

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神様の贈りもの

創作長編小説

 離婚しようとしてる相手の金を勝手に使うなんて考えられないし、勝手にアパートの連帯保証人にされたのだって信じられない。そんなの、たとえ夫婦でも有印私文書偽造じゃないか。なにより、親父とお袋が援助してくれた金が入っていた口座は、両親から ...

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神様の贈りもの

創作長編小説

 もしかしたら服や本の間、CDの間に紛れ込んでいるかもしれない。そう思って全ての荷物を取り出して確認するものの、預金通帳も印鑑も入ってない。ダイニングに置きっぱなしになっている何個ものゴミ袋の中や、置いてあるはずのないキッチンや玄関ま ...

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神様の贈りもの

創作長編小説

 実家からアパートへ戻る途中でコンビニに立ち寄り、夕食の弁当とビールを二本買った。荷物を片付けるのに手間がかかりそうなので、途中で作業を中止したくなかったのと、短期間とはいえ、理恵子と二人で暮らした住まいになるべく長くいようと思ったか ...

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神様の贈りもの

創作長編小説

 自室に籠ってゴロゴロしてると惨めな自分の姿しか浮かばないので、どんどん鬱になってくる。それでも何もする気にならないし、このまま夜まで過ごしてしまおうかとも思ってしまう。部屋の窓に目をやると信号機があの時と同じように青、黄、赤と変わっ ...