Autographic:あとがき
「犬をいじめると狼が来るぞ!」
子供の頃、犬に追いかけられて石を投げつけながら家に帰ると、小鹿野町出身の祖母に決まって「狼が来るぞ」と怒られた。
昔は犬が放し飼いにされていて、野良犬か飼い犬かの区別は知ってる家で飼われてる犬か知らない犬かで決まったのだ。
野良犬も飼い犬も関係なく群れを作り、そんな犬の群れに出会ってしまったら犬から眼をそらさず、地面にある石を拾って静かに後ろへ逃げなくてはならなかった。石を拾うのは、追いかけられた時に犬に投げつけるためである。
祖母の実家が氏子になっている神社は狛犬が狼で、他の土地の人が見ると不思議に思うような狛犬だった。狼信仰が残る秩父には狼の狛犬が多いのだが、小さい頃から狼が信仰の対象だった祖母には、きっと狼は馴染み深い動物だったのだろう。そして、秩父郡の隣接地域に住む我々にとっても、狼は火事と盗難から守ってくれる使い神として馴染み深い動物である。
そんな子供の頃の思い出を元に「Autographic」という物語を考えついたのだが、そもそも考えるきっかけになったのは中学生の甥であった。こいつがテレビゲームばかりしていて勉強しないので、「ゲームばかりしてねえで本でも読め」と言って買ってやろうとしたのだが、いざ買おうとすると中学生向けの本が思い浮かばない。
芥川龍之介や太宰治のような名作を買ってやっても興味が湧かないだろうし、実写映画化された青春小説も「映画を見たけど話しが嘘くさい」と言って見向きもしないのである。
現代の中学生にとっては刺激の強いゲームのほうが面白いのだろうが、その甥がゲームを止めて聞くのが著者の子供の頃の話だった。
小学生向けの読み物は書店にたくさんあるが中学生向けの読み物が少ないと思っていた著者は、甥が興味を示す昔話を元にして、自分で中学生が読むような物語を書こうと思い「Autographic」を書きはじめたのだ。
小鹿野の大叔父の家に泊まりに行き山女魚や岩魚を釣ったこと、家の前の道路にある外灯の下にカブトムシやクワガタが集まってくるので、探さなくてもミカン箱一個分の虫を採ったことなどたくさんの思い出があったが、大叔父が聞かせてくれたニホンオオカミの話と初めて鹿を見た体験を元に、主人公を中学生にして自然や野生の命と触れ合い「生きる」ことをテーマに物語を構成してみた。
子供の頃の著者と比べても想像力が乏しい甥を思い浮かべ、絶滅したニホンオオカミが生きてるかもしれないと想像力を働かせながら読めるようにしたつもりである。
だが、書き終わって読み返してみたが、意図は半分も盛り込めてなくダラダラした話になってしまった。いま考えてる物語はもっと上手く書けるように頑張ろう。
それでは、いつか再び大口真神が姿を現し我らをお守りくださることを祈りつつ、物語を終わらせていただきたいと思います。
拙い物語でしたが、読んでくださった皆さまに感謝いたします。
「Autographic」を書くのにインスパイアされた曲
Sex Pistols – Pretty Vacant
The Queers – Drop The Attitude Fucker
Snuff – Not Listening
RAMONES – I Don’t Want To Grow Up
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