Heaven Sent:第十四話

創作長編小説

 自室に戻って照明の豆電球だけは点けたままベッドに飛び込み、恐怖でエンジンブローしそうなほど高鳴っている心臓の鼓動を感じながら、タオルケットを頭まで掛けた。神社の御神木といいチャイムが鳴ってるのに誰もいないことといい、今日の出来事は絶対おかしい。心臓が壊れそうなくらい激しく脈打つのも当然である。

 ベッドの中で丸くなり、自分の両腕で自分の体を強く抱きしめ震えを抑えようとするものの、体の震えは納まる気配がない。自分の部屋の目の前、手を伸ばせば届きそうな距離にある信号機の青い光が部屋の中に差し込み、タオルケットを掛けている自分を照らしているのが分かる。窓も開けてない真夏の蒸し暑い部屋の中で、汗と冷や汗を同時にかきながら自分自身の落ちつきを取り戻すことに集中する。

 鼻から大きく息を吸い、口からゆっくり吐き出す作業を何度も繰り返し、パニックになった己が徐々に落ち着いてくるのを待って仰向けになり、瞼を閉じたまま変わっていく信号の光を、青、黄、赤と数えながら、少しづつ、少しづつ落ちつきを取り戻していったが、何十回目かの赤信号の光を感じたときに部屋に違和感を感じ、恐怖と闘いながらそっと瞼を開いた。ゆっくり眼球を動かしながら左右を確認するものの、不自然なところはない。しかし、頭をもたげ足元を見た瞬間、信じられない光景が両目に飛び込んできた!

 足元にあるクローゼットの左側の扉いっぱいに、半透明の薄い青色をした六十歳前後と思われる男の顔が映っているのだ!

 その男は瞳孔が開いた死人のような目をしており、肩まで伸びた髪はモジャモジャでジッと俺を見つめている。男を見た瞬間、叫び声をあげたが声は出ておらず、体の自由も利かなくなっていた。

 ――助けて!

 再び叫んだものの声は出ない。体を動かして逃げようとするが体も動かず、脚をジタバタさせようともがいていると、何者かに両足首を掴まれ「グイッ!」とクローゼットの方向に引っ張られた刹那、自分の内側が体の外に引きずり出される感覚を味わう。魂を引きずり出されるとでも言えばいいのか、引っ張られるごとに顔の位置が下がっていき、見ている自分の顔と分離していく。

 声も出ず体も動かせないままグイッ、グイッと何度か引っ張られ、「死」という文字が頭の中に浮かんできたとき、突如として部屋の中が太陽のような強い光でいっぱいになったかと思うと、普通の会話くらいの大きさだが家ごと押し潰されるかのような圧倒的音圧で男の声が響いた。

『人をバカにするんじゃない』

 男の声が響くとクローゼットに映っていた男の顔が消え、引きずり出された内側は元に戻って太陽のような光は徐々に弱くなっていき、やがて部屋が豆電球の光だけになると部屋に残された俺は極度の疲労を感じ、ゼェゼェ息をしながら恐怖で目を見開き、ベッドに横たわったまま天井を見つめる以外できなかった。

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