Heaven Sent:第十一話

創作長編小説

 ――夜十一時三十分、家の中から物音が聞こえなくなり静かになった。家族は全員床に就いたようだ。スウェットからジーンズとTシャツに着替え、カメラと家の鍵を持ってそっと階段を降りて行った。

 廊下も玄関も真っ暗で父と母も寝てしまったのが分かる。音をたてないように靴を履き、玄関のドアを開けた。小和田の家までは歩いて三分くらいだが、今日は高田の家の向かいにある神社まで行かなけれなならない。ドアに鍵をかけたか確認し、庭に置いてある自転車にまたがり、そっと門を開けて家を出た。

 家の前の通りを西に進み、十字路を右折すると突き当りに小和田の家がある。二階にある奴の部屋から灯りが漏れているので、自転車から降りてパチンコ玉より小さい石を拾い窓に向かって投げた。カチン、と窓に当たる音がして小石が屋根を転がり落ちたとき、小和田の部屋のカーテンが開き窓から誰かが顔を覗かせた。

「小和田、行こうぜ!」

 二階の窓に向かって小声で言うと小和田は手を挙げ、灯りが消えて間もなく玄関のドアが開き小和田が現れた。

「里見、学校の花壇の手入れをするって言って出てきたのか?」
「もちろん。お前も同じだろ?」
「当然。親同士が話してバレたら困るからな」

 俺の家と小和田の家は近所だし、親同士も顔を合わせて喋る機会が多い。俺たちの話になり夜家を出た理由が異なってたなんて、一発で嘘がバレるようなことは絶対にあってはならない。俺と小和田は幼稚園からの腐れ縁、過去の経験からの共通認識のもと、一緒に行動する時は共通の理由がなければ不都合が生じるのは何度も経験している。学校から帰って家を抜け出す理由について小和田に電話したのも阿吽の呼吸ってやつだった。

 小和田と喋りながら神社に向かって自転車を走らせ、十五分ほどで神社横の公民館に到着。駐車場を見ると、すでに俺と小和田以外の全員が集まってるようだ。

「お~、来た来た」

 自転車に乗った俺と小和田が近づくとチョーケンが声をかけてきた。

「家出るの大丈夫だったかよ?」
「俺と里見は花壇に水をやるって口裏を合わせて出てきたぜ」
「へへへ、俺とケンとまーちゃんは部活を引退して体がなまっちゃうから、三人でランニングしてくるって言って出てきたぜ」
「俺と高田は、高田の部屋で勉強することにしてる」

 チョーケンに続けてゴリも家を出た理由を話す。高田の家は大きな農家で、奴の部屋は庭に建てられたプレハブだった。プレハブとはいえ、母屋と離れてると親から干渉される事が少ないように見えて、俺たち全員が高田の境遇を羨ましく思っていた。親と一緒に行動するのもダサく思う年頃だし、つまらない事で小言を言われたり、いちいち干渉されるのもウザく感じる。俺たち全員、早く大人になって一人暮らしを始める夢を語り合ったものだ。

「全員揃ったな。カメラ持ってきたよな? じゃあ神社へ行こうぜ!」

 まーちゃんを先頭に、俺たちは公民館の横にある神社へ向かい歩いていった。

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