Heaven Sent:第十三話

創作長編小説

 友達の後を追いかけて必死に走っていると、鳥居の手前で何者かに右肩を掴まれ引き倒されそうになったが、俺たち以外に人がいる訳がない。恐怖から逃れるように走りながら頭を左右に振り、公民館の手前でやっとケンに追いついたが、誰も別れの挨拶なんかしないで自転車に飛び乗り、各々が自宅の方向に向かって凄い勢いで走り去っていく。俺も首にカメラを掛け、片手で自転車のハンドルを掴んでスタンドを跳ね上げ、走って自宅の庭に入っていく高田を横目で見ながら自転車を漕ぎだした。

 同じ方向に向かって自転車を漕ぐ小和田の背中を見ながら、半ばパニックになっている俺はなにが起こったのか考えようとしたが、怖くて頭の片隅すら使うことができない。途中で小和田を抜き去っても言葉すらかけず、自宅目指して自転車を漕ぎ続けた。

 自宅に到着した俺は自転車を置き、急いで家に入って玄関の施錠をすると寝ている家族を起こさないように速足で部屋に入り、ベッドに飛び込んでタオルケットを頭から被って落ち着くのを待った。家の前の道路を走る自動車の音を聞いているうちに体の震えが収まり、なんとかパニック状態から回復してきたが、なぜ御神木が突然揺れ出し、生木が裂けるような音や木が倒れるような音がしたのか考えても分からない。だいたい風も強くなかったし周りの木は揺れてなかった。あの御神木だけが幹から揺れ出し、強風に煽られるように枝が大きく音を立てたのだ。

 ベッドの中で体を丸めてた俺は顔の横にカメラがあるのに気づき、起き上がってカメラを机の上に置いて着替え始めた。Tシャツもジーンズも汗まみれで体中びっしょり濡れており、シャワーを浴びたくなる。だが、これからシャワーを浴びるほど俺には度胸がない。なにしろたった今、神社で不思議な体験をして帰ってきたばかりなのだ。

クローゼットから出したタオルで身体を拭き、スウェットに着替えてベッドに潜り込もうとした瞬間、静まりかえった家の中にチャイムの音が響いた。

(ふぅ……心臓が止まるかと思ったぜ)

 たかがチャイムの音に体をビクンとさせた自分が少し腹立たしい。だけど、こんな時間に誰が来たんだ? なにか緊急の用件なんだろうか。一階で両親が寝てるんだし父か母が出るだろうと思っていたら、またチャイムが鳴った。

 ピンポ~ン。

 両親が出るはずだと思いながら聞き耳をたてるものの、インターホンで話す声もドアを開ける音もしない。何度かチャイムが鳴ってるにもかかわらず、一階で寝ている両親も隣の部屋の妹と弟も起きた気配がない。言いようのない不安に襲われはじめた俺は、ベッドに戻り聞こえないふりをしようか考えたが、近所の人や親戚が大変なことになって訪れたとしたら……。

 覚悟を決めて階段を降り、玄関に行くと再びチャイムが鳴る。

 ピンポ~ン。

 きっと誰か何かあって来たんだ。そう思い玄関の鍵を開錠し、心臓の鼓動に合わせるかのようなスピードでドアを開けた。

 ピンポ~ン。

ドアを開けると再びチャイムが鳴ったが、そこには誰もいない。

 ――嘘だろ!

 ドアを開けたらチャイムが鳴ったんだから、そこに人がいなきゃおかしい。急に全身が恐怖に包まれ鳥肌が立ち、慌ててドアを閉めて階段を駆け上がった。

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