Heaven Sent:第十二話

創作長編小説

 神社の前に来た俺たちは鳥居の前で立ち止まり、誰からともなくペコリと頭を下げた。こういった仕来たりや礼儀作法には、なぜかゴリがうるさい。

「みんな、鳥居の真ん中通るなよ」

 ジメジメして体に纏わりつくような夜の空気の中、ゴリの言葉を聞きながら月明かりに照らされた周りの奴らを見ると、全員の顔が緊張のため強張っている。そのためか分からないが、鳥居をくぐるとき一列に並んで右側を歩いて境内に入っていった。

 人気のない神社は鬱蒼と茂る木々が風で揺れる音と、道路から聞こえてくる車の音以外物音がせず静まりかえっている。時折り、樹木に巣を作っているのであろう鳥か動物が悲鳴のような鳴き声をあげる深夜の神社はいかにも幽霊が出そうな雰囲気を醸し出しているので、生唾を飲み込む俺の体も自然と力が入ってしまう。ホームレスが首を吊った木は社の手前にあるしめ縄を張った境内の木、目の前にあるこの神社の御神木だ。腕時計は十一時五十八分、ホームレスの男が首を吊った現場の手前まで歩いていき、みんなで御神木を取り囲むようにして立ち止まりカメラを構えた。

「みんなカメラの用意はいいか? 十二時まで五秒……四秒……三秒……二秒……一秒……十二時! 撮影!」

 チョーケンの言葉を合図に、みんなが頭上にある木の枝に向けてカメラのシャッターを切っていく。

 パシャッ、パシャッ、パシャッ……。

 俺たちは無言でシャッターを切り続け、七~八枚くらい撮影したときだろうか、突如として御神木だけが「バサッ、バサッ」と大きな音を立てて揺れ出した!

 シャッターを切る手を止め、顔を引き攣らせながら御神木を見上げ、次に周りの樹木を見回したが、揺れているのは目の前の御神木だけである。風なら周りの木の枝も揺れるはずなのに、御神木は枝どころか幹自体も揺れていた。眼だけで他の奴を追うと、全員が口を開けて愕然とした表情で御神木を見上げている。俺たちが口を開けたまま立ち竦んでいると、さらに信じられない出来事が起こった。

 ――メキッ! メキメキメキッ! バキッ! バキッ! バキッ! ギイィ~ッ。 ドズウゥ~ンッ……。

 まるで巨人が木を裂くような音とでも言えばいいのか、テレビや映画で木こりが木を切り倒すときに聞こえてくるような効果音とでも言えばいいのか、そこに生えている御神木から聞こえるはずのない不気味な音が響き渡った。

(――ヤバい!)

 ありえない音を聞き我に返ると、すでに他の奴は鳥居に向かってダッシュしている。俺もカメラを握り締めて硬直した体を無理やり動かし、人生でこれ以上速く走ったことがないくらいのスピードでみんなの後を追いかけた。

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