創作長編小説

神様の贈りもの

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 友達の後を追いかけて必死に走っていると、鳥居の手前で何者かに右肩を掴まれ引き倒されそうになったが、俺たち以外に人がいる訳がない。恐怖から逃れるように走りながら頭を左右に振り、公民館の手前でやっとケンに追いついたが、誰も別れの挨拶なん ...

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神様の贈りもの

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 神社の前に来た俺たちは鳥居の前で立ち止まり、誰からともなくペコリと頭を下げた。こういった仕来たりや礼儀作法には、なぜかゴリがうるさい。

「みんな、鳥居の真ん中通るなよ」

 ジメジメして体に纏わりつくような夜の ...

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神様の贈りもの

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 ――夜十一時三十分、家の中から物音が聞こえなくなり静かになった。家族は全員床に就いたようだ。スウェットからジーンズとTシャツに着替え、カメラと家の鍵を持ってそっと階段を降りて行った。

 廊下も玄関も真っ暗で父と母も寝てし ...

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神様の贈りもの

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 目が覚めると部屋の中が薄暗くなっており、首や腕、脚のあちこちが痒い。小説を読んでたはずなのに、いつの間にか寝てしまったようだ。窓は全開のままだしTシャツに短パンじゃあ、蚊に刺してくれって言ってるのに等しい。痒くなって当たり前だろう。 ...

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 自宅の前まで行くと、庭に車が停まってない。ラッキーなことに母は買い物にでも出かけてるようである。今のうちにカメラを確保しておこう。これ幸いとばかり、家に入った俺は真っ先にリビングへ行き、戸棚に置いてあるカメラを取って二階にある自分の ...

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神様の贈りもの

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 バレー部の部室が使えないなら、プール下の古い机や椅子が置いてある場所しかない。そこは以前、不良たちの溜まり場になっていたが、プール横に通称「大島農園」と呼ばれる花壇ができてからは、部員が一人もいない園芸部顧問、大島先生を恐れて誰も近 ...

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神様の贈りもの

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 俺に気を使ってか、あまり喋らない親父とお袋と一緒にいるのが辛いので、借りた布団を車に積み、お昼には帰って来ると伝え実家近くの川へ散歩に出かけた。橋の袂から土手に入り、何度も夢で見た場所へ行くと、子供の頃は田圃と畑ばかりで民家は数える ...

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神様の贈りもの

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 ――実家の南を、西から東に流れる小さな川の北側の土手の上、真っ暗闇の中に俺は立っていた。まるで、映画のスクリーンかテレビ画面を見るように、俺が見るところだけ映像が写り他は真っ暗闇。下を見ると、普段は大人の膝丈くらいの水量しかない川だ ...

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神様の贈りもの

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 十二月二十五日クリスマスの夜、仕事を終えて、外灯も点いてない家に帰ると、暗闇の中手探りでドアの鍵穴を探し出して玄関を開けた。

 真っ暗な我が家、灯りを点けようと壁に手を伸ばしてスイッチを操作するが、何度オン・オフを繰り返 ...