Heaven Sent:第十話

創作長編小説

 目が覚めると部屋の中が薄暗くなっており、首や腕、脚のあちこちが痒い。小説を読んでたはずなのに、いつの間にか寝てしまったようだ。窓は全開のままだしTシャツに短パンじゃあ、蚊に刺してくれって言ってるのに等しい。痒くなって当たり前だろう。部屋には美味そうな匂いが充満しており、母が夕飯の支度をしているのが分かる。

 夕食前にシャワーを浴びてダイニングへ行くと、俺以外の家族が集まって夕飯を食べるところだった。俺も席に着き、父が見ている巨人戦を見ながら母が作ってくれた豚肉の生姜焼きの匂いを嗅ぐと急に腹が鳴ったので、生姜焼きをひとつまみ。大好物を味わいながら、テレビを見ている父に話しかけた。

「今夜、学校の花壇を手入れしなきゃだから、ちょっと出かけてくるよ」

「花壇の手入れ? 夜にか?」

「うん。大島先生と一緒に植えたガザニアの育ち具合がよくないんだよね。小和田も心配してて、夜中も生育状況を見なきゃって話してるんだ」

 大嘘だった。ガザニアなんて花の名前、花壇に刺してあるプレートに書いてあるのを見ただけで、どんな花なのかも分からない。とにかく心霊写真を撮影するために家を出られればいいのだ。父が眉間に皺を寄せて考え込み始めたとき、ちょうど母が味噌汁とご飯を運んできた。

「へぇ、ガザニア育ててるんだ。勲章菊ともいうんだけど、いろんな色の花を咲かせる綺麗な花よね。花言葉が『あなたを誇りに思う』だったかな? 花言葉みたいに、大島先生が花壇の手入れを手伝ってる二人を誇りに思ってガザニアを選んだのかもね」

 母の言葉に頷きながら、父が話してきた。

「大島先生が頼りにしてるんじゃ仕方ない。花壇の手入れが済んだら、すぐ帰ってきなさい」

「うん。一時間くらいで帰ってくるよ」

 これで決まりだ。俺の嘘を分かっている妹と弟を目で牽制し、心の中でニヤリと笑いながら晩飯を食べ始めた。今夜は間違いなく体力と精神力を消耗する。飯をたくさん食べて緊張の時間に備えよう。四杯お替わりして満腹になり、自分の部屋に戻って家を出るタイミングを伺うことにした。

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