Heaven Sent:第七話

創作長編小説

 バレー部の部室が使えないなら、プール下の古い机や椅子が置いてある場所しかない。そこは以前、不良たちの溜まり場になっていたが、プール横に通称「大島農園」と呼ばれる花壇ができてからは、部員が一人もいない園芸部顧問、大島先生を恐れて誰も近づかなくなった。非常に危険な場所だが、古い机や椅子を上手く使ってバリケードを築き身を隠すしかない。運動部の生徒たちが出す声がセミの声より大きく聞こえる体育館の裏側と校庭の間で、まずはチョーケンが田中のヒステリーから無事解放されるのを待とう。

「チョーケン待ってプール下へ行こう」

 みんなに声をかけてから一列に並んでコンクリートの上に座り、体育館の建物にもたれかかった。太陽を遮るものが無いその場所は真夏の日差しがウザいくらい照り付け、俺たちの体を焦がしている。授業で聞いた、原爆でコンクリートに影を焼き付けて一瞬で蒸発し亡くなった人の話を思い出す。暑すぎて誰も何も喋らずに時が過ぎるままでいると、やっとチョーケンが現れた。

「あ~精神崩壊しそう」

 チョーケンの第一声に全員笑いながら立ち上がり、各々が慰めの言葉をかけた。そりゃあ精神も崩壊しそうだろう、田中女史のヒステリー爆弾の直撃を食らったんだから。

 チョーケンが合流したところで「大島農園」の横を通りプール下へ向かう。みんなで乱雑に置かれている机をどかし、きれいに積み直してバリケードを築き、中に椅子を丸く並べて座った。

「大島に見つからないように小声で話せよ」

 ケンの呼びかけを皮切りに、心霊写真を撮影に行く話が始まった。いつ行くか? 何時ごろ行くのか? すでに心霊写真を撮影しに行くことは決定事項になっており、みんなが話すことは決行日時のことばかりだ。

「やっぱり早い方がいいんじゃねえか? 生々しい自殺現場を撮影したほうが心霊写真が撮れると思うぜ」

「俺もそう思う! もうすぐ夏休みで『あなたの知らない世界』が始まるし、今夜行こうぜ!」

 小和田の提案に、ケンとゴリが賛成する。

「時間は何時にするよ?」

「夜中の十二時ぴったりに撮影しようぜ。十分前に公民館の駐車場集合でさ」

 小和田の言葉に全員が賛成した。十一時五十分に神社横の駐車場集合、十二時ジャスト撮影開始だ! 神秘の世界への入り口に立ち、これから不思議な冒険が始まる期待からか、みんな緊張顔だ。言うまでもなく、俺だって緊張して顔が強張ってる。

「みんなカメラ持ってこいよ。家の人に使われないように早く帰ってカメラを確保しよう」

 高田の声に全員が首を縦に振り、今のうちに家にあるカメラを確保しておく事になった。椅子から立ち上がったまーちゃんが、みんなを見回しながら確認するように決めた事を繰り返す。

「十一時五十分に神社横の駐車場集合、十二時ジャスト撮影開始だ。みんな遅れるなよ」

 みんなお互いを見ながら各々が頷く。俺たちはプールの下から出て誰かいるか確認し、大島先生の花壇の横を通ってそれぞれ家路についた。

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