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第4回ツギクル小説大賞で、当サイトの作品「夢幻の旅」が奨励賞を受賞しました。
管理人:Inazuma Ramone

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【平成三十年三月三十日】前略、橋の上より

雑記帳:読むな! 呪われるぞッ!

前略、山間の店舗の皆さん、お元気でしょうか?

送別会を開いていただいてからまだ一週間ですが、お便りします。

そちらの新店長と入れ替わりの異動、自分には意味が理解できません。そちらの新店長も自分も、お互い通勤時間が二倍になりました。そちらの店長は他県から山越え、自分は県境の川を越えて通勤です。東京の銀座から引っ越してきて四十六年、子供の頃から自慢だった流域面積日本一の川、今、初めてフザけんなって思ってます。

家を出てから大渋滞の橋を渡り、隣の県に入るまで一時間、普段なら四十分の道のりが遠くて仕方ありません。川を越え、嫁の実家の前を通り、新配属店に行くまで一時間四十分、家からそちらの店舗への距離より十キロ近いのに通勤時間は二倍です。嫁とお袋を抱えて食っていかなければならないのに、自分、五十歳を過ぎて肩叩きされてるんでしょうか? 気分は最悪です。

おまけに新配属先はオタクばかりで話しについていけません。カードゲームのルールが分からないと言ってるのに、なぜルールが分からないカードゲームの話を延々とするんでしょう? きっと、皆さんもついていけないと思います。

皆さんの地元は変な人が多いとおっしゃってましたが、こちらの変な人は、そちらの変な人の十倍変で、十倍数が多いです。自分、初日に出勤して四十分で、こちらの店舗のエース級のクレーマーに当たりました。そちらの土地の変な人が高校サッカー優勝校クラスの攻撃力だとしたら、こちらの変な人の攻撃力は日本代表クラスです。もっとも、自分、前々所属店で、ブラジル代表クラスの攻撃力を持つ方々を相手してきたんで、なんとかP.K.だけは防ぎましたが。

二日目には、中国人にケチをつけられました。

「ワタシ、マチガッテナイ! 五枚センゴヒャクエン、カイテアッタ!」

突然、片言の日本語で喚き散らされたので、「十枚あるんだけど?」とツッこむと

「アッ……ショウヒゼイ……」

――完全に答えを履き違えた中国人に救われたと言えばいいんでしょうか、頭の中が混乱しているらしい中国人に強引に商品を売りつけ、自分、なんとかこの場を凌ぎました。今日も二人、変なオヤジがゴチャゴチャ言ってましたが、雑魚の戯言だったのでよく覚えてません。自分、不器用ですから。ただ、この店舗はタレント豊富な店舗であることは間違いないです。これも店舗が歓楽街に近いせいなんでしょうか、それとも土地柄なんでしょうか。ただ、皆さんの地元のほうが変な人が少ないのは確かです。

そうそう、自分、移動初日に、皆さんと話してたことを実際にヤらかしてしまいました。明らかに南米系と思われる、水色のジャージを着た彫りの深い綺麗な顔の女子高生が、自分の顔をジッと見つめているので緊張していまい、会計が済んだ商品を手渡しするのを忘れてしまったんです。もちろん自分、商品を手に後を追いかけましたよ。

「ヘイ! セニョリータ! セニョリータ!」

女子高生を呼びながら後を追いかけると、周囲のお客様に大爆笑されてしまいました。女子高生は「あっ、すいません」とネイティブの日本語で商品を受け取り店を出ていきましたが、こちらの地域では日本語ペラペラの日系人なんて常識なんでしょう。なんてったって、浅黒い肌にアフロヘアで口髭の、ファンキーな男二人組が乃木坂46の歌を口ずさみながら、「新しい店長、眼つきが鋭くて怖そうじゃん」と自分を批評するくらいですから。やっぱり自分、不器用なんですね。

新所属店は、自分の知らない常識に満ちた不思議な店舗です。自分、この店で本当にやっていけるのか心配です。そちらの店舗に戻りたくて仕方ありません。

それでは山間の店舗の皆さん、お元気で。渋滞の橋の上から、またお便りします。

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