創作長編小説

Autographic

創作長編小説

「秀人! 突然いなくなったから心配したぞ!」

 おじさんと新井さんが、猟銃を肩に掛けたまま凄い顔で近付いてくる。見ると、立ち止まって野犬を見ていた猟犬たちも、おじさんたちが来たら尻尾を振って動きはじめた。

「お ...

創作長編小説

Autographic

創作長編小説

 熊は後ろ脚で立つのを止め、再び前脚を地に付けて川の中を僕の方に向かってゆっくりと歩いてくる。野犬を見ると、熊を睨んだまま歯をむき出して唸り声をあげ、熊を威嚇していた。

 川のせせらぎと体をすり抜けていく風だけが時の流れを ...

創作長編小説

Autographic

創作長編小説

 ――暗闇の中、背の高い草をかき分けながら歩き続けている。

 樹木に遮られて星明りも届かない山の中を、もうどれくらい歩いたのだろうか。後頭部からは血が流れ、痛む背中と右脚を引き摺りながら歩いていく。まるで、空襲後の焼け野原 ...

創作長編小説

Autographic

創作長編小説

 翌朝、起きてすぐおじさんが作ってくれたおにぎりを食べ、薬を何錠も飲んで歯磨きと洗顔を済ませて着替え、猟で使う道具を軽ワゴン車に積み込み、ゴローとハナを檻から出して車の荷室へ乗せて僕も車に乗る。

 おじさんが運転席に着座し ...