Autographic 第十五話:再会
まるで道案内するかのように僕の前を歩く野犬。
後ろから観察すると、毛色や体型からハスキー犬と四国犬が混じったような雑種犬と思われるが、長くて太い尾の先は切断されたように丸く、先端の毛は黒い。ピンと立った耳は地犬や甲斐犬 ...
Autographic 第十二話:遭難
横も後ろも正面も、周りは樹木が生い茂り薄暗い。よく晴れた五月の午前中だというのに、太陽の光が半分くらいしか届かないようで肌寒さすら感じる。
僕の前にはおじさんと新井さん、その先にはゴロー、ハナ、ジョン、キースの四匹が歩 ...
犬は外? 犬は内?
犬が登場する物語を書いてるためか、妙に犬が飼いたくなっている。物心ついたころから、常に犬や猫をはじめとしたペットを飼ってる家庭で育ったためかもしれない。
最後にペットを飼ったのは9年前に死んだ雑種犬だったが、この犬が死 ...
Autographic 第十一話:迷路
小さな軽自動車の後部座席に座り、悪路に揺られて行く。僕の後ろではゴローとハナ、新井さんの二匹の甲斐犬が居心地悪そうにおとなしくしている。
ふと、新井さんの甲斐犬の名前を知らないことに気づき、おじさんと喋っている新井さん ...
Autographic 第十話:狩り
翌朝、起きてすぐおじさんが作ってくれたおにぎりを食べ、薬を何錠も飲んで歯磨きと洗顔を済ませて着替え、猟で使う道具を軽ワゴン車に積み込み、ゴローとハナを檻から出して車の荷室へ乗せて僕も車に乗る。
おじさんが運転席に着座し ...
Autographic 第五話:伝説
母さんと二人でバッグや紙袋に私物を詰め込んで荷物を作り終えると、母さんは着替えが入ったバッグを二個だけ両手に持ち家に帰った。一人病室に取り残された僕はベッドに寝転び、犬の雑誌の続きを読みながら、明日退院するという逸る気持ち抑えること ...
Autographic 第二話:虚無
空っぽのまま生きてる屍のような今の僕には、どんな慰めの言葉も気分転換も無意味だ。明日の放射線治療も投薬治療も、僕の心を前向きにすることはない。僕の体はこのまま衰え、死に向かってひた走っているんだから。
「大舘さ~ん、検温 ...