第七話 Head On A Pole 其の11
最後の一撃が自分の身体を打ち砕こうとした瞬間、カツラスキーが崩れ落ち両膝を地面に付くのが視界に入り、同時に自分の身体も地面に落ちた。
ベラマッチャは朦朧としながらも、苦しそうに肩で息をするカツラスキーを視界に捕らえ、何がおこったのか理解できず呆然と見つめた。
「うぅッ……。頭が割れそうだ……」
カツラスキーは苦悶の表情を浮かべ、脂汗を滲ませて呻いている。
ベラマッチャは先程カツラスキーが、青褪めた顔で脚をフラつかせていたのを思い出し、痛みに耐え立ち上がった。視界はボヤけ、意識は朦朧としたままだが、ベラマッチャは紳士としての威厳を無くさぬ様、倒れそうになる身体を気合で立たせ続ける。
息を整えるベラマッチャの前で、苦しむカツラスキーは頭の上に重ねた三つの魔ヅラを脱ぎ捨てた。
その瞬間、ベラマッチャは悟った! 魔ヅラはヘアスタイルを模した人間の力を使えるものなのだ。常人では、三人の人間の力を一度に使う事など出来ないだろう。カツラスキーは『魔ヅラ三段増毛術』なる大技を放つ事により、体力の限界を超えてしまったのだ!
ベラマッチャはよろける身体を必死に立たせたまま、カツラスキーを指差した。
「ヅラ師ヅラに溺れる。君は魔ヅラに絶対の自信を持つあまり、己の体力の限界を見誤ったのだ」
ベラマッチャの確信に満ちた指摘に、カツラスキーは苦渋の表情を浮かべた。
「フフフ……。どうやら貴様の指摘は正しいらしい。まだ未完成だったとはいえ、貴様ごときに魔ヅラ三段増毛術が敗れるとは……」
「今の君では豆腐を砕くのがやっとだろう。それともまだやるかね?」
ベラマッチャの言葉に、カツラスキーはよろめきながら立ち上がると頭上で旋回する魔ヅラを指で操り、空の彼方へ飛び去らせてベラマッチャを睨みつけた。
「任務失敗という事か……よかろう、今回は見逃してやる。だがワグカッチを王国直轄地とする方針に変わりはない。次に会った時が貴様等が死ぬ時だ!」
カツラスキーは震える声で叫ぶとベラマッチャに背を向け、よろめきながら森の中へ消えて行った。
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