第八話 Give It Up 其の1
ベラマッチャはカツラスキーが見えなくなるまで目で追った後、失神しているヘンタイロスに目を移した。
自分を見捨てカツラスキーに取り入ろうとしたヘンタイロスは、白目を剥き口から泡を吹いて失神している。そのオカマの顔がベラマッチャには忌々しく思えるが、ワグカッチの顔役の所へ急がねばならない。
ベラマッチャはヘンタイロスを抱きかかえると、身体を揺すってヘンタイロスを起こした。
「ヘンタイロス君、傷は浅いぞ。しっかりしたまえ」
ヘンタイロスに語りかけながら数度、身体を揺するとヘンタイロスはゆっくりと目を開いた。
「うぅッ……。カツラスキーはん? まあッ! ベラマッチャ、顔がパンパンに腫れてるじゃないのん!」
「彼は僕が追い払った。もう大丈夫だ。ポコリーノ君たちを起こそう」
ベラマッチャの言葉にヘンタイロスの顔がパッと明るくなり、フラつきながらも立ち上がると倒れているポコリーノの身体を起こし、渇を入れ始めた。その様子を見ていたベラマッチャも、カルロス・パンチョスの身体を揺すって目を覚まさせると、シャザーン卿の様子を見るため墓穴へ向かった。
中を覗き込んでいると、パンチョスとポコリーノ、ヘンタイロスもフラフラしながら傍へやって来てベラマッチャを取り囲んだ。
「ベラマッチャ、その顔はまさかカツラスキーとやったのか? 奴は何処へ行ったんだ?」
「ポコリーノ君、カツラスキーは僕が追い払った。厳しい勝負だったが、彼の技の未熟を見抜き、なんとか勝つ事ができたよ」
「流石はベラマッチャさんだぜ。あの大技を破るとは……」
「諸君、それより早くシャザーン卿を起こして顔役の所へ行こうではないか。マラッコの親分はカツラスキーの手先だったのだ。事は急を要する」
「なんだって!」
「マラッコの親分が……」
ベラマッチャはカツラスキーが語った王宮によるワグカッチ乗っ取りの真相を、失神していたポコリーノとパンチョスに語った。
二人とも腕を組みベラマッチャの話を聞いていたが、陰謀の次第が明らかになってくると困惑しながら顔を見合わせた。二人とも、王宮の陰謀にイザブラーの兄弟分であるマラッコが一枚噛んでいるのが信じられないらしい。だがそれも当然だろう、ベラマッチャ自身でさえ未だ半信半疑なのである。
「ねぇん、それより早くシャザーン卿を起こしましょうよん」
ヘンタイロスの言葉にベラマッチャたちは我に返り、各々穴の縁に立って中を覗き込んだ。墓穴の横には『カルロス・パンチョス』と書かれた卒塔婆が立っており、穴の深さは腰辺りまである。飛び降りても危険は無いだろうが、穴の中は大の字になったシャザーン卿の身体で一杯になっている。
ベラマッチャが腕を組み、どうしたものかと思案していると、横に居たヘンタイロスが声を掛けてきた。
「ベラマッチャ、中にもう一人は入れないわよん?」
「むぅ……。ヘンタイロス君、僕もどうしたものか考えていたところだ。ポコリーノ君、何かいい考えはないかね?」
ベラマッチャの言葉に、ポコリーノは頭を振り答えた。
「中に入れないなら、棒でつついてみようじゃねえか」
「フッフッフ……。オヤジを棒でつつく。いいアイデアだぜ。やってみようじゃねえか」
ポコリーノの答えに、墓穴の反対側にいたパンチョスが賛意を示す。
ベラマッチャとヘンタイロスもパンチョスの賛同を受け、棒でつついてみようと二人で棒を探に出た。
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