夢幻の旅:第三十話
緩和ケア病棟は、今いる病棟の南側にある。
二つの病棟をつなぐ二階の連絡通路に行くため、俺たちはエレベーターに乗り込んだ。
扉が閉まると、俺は溢あふれ出る涙を袖口で拭き、大きく溜息をついた。
「 ...
Autographic 第三話:透明
朝、目が覚めるとバイタルサインチェックをして、朝食前に放射線治療。放射線専用の部屋へ行き、治療前の説明で、放射線を体に当ててどれくらいのエネルギーが吸収されるかを、Gy(グレイ)という単位を使って説明されるものの、まったく分からない ...
Autographic 第二話:虚無
空っぽのまま生きてる屍のような今の僕には、どんな慰めの言葉も気分転換も無意味だ。明日の放射線治療も投薬治療も、僕の心を前向きにすることはない。僕の体はこのまま衰え、死に向かってひた走っているんだから。
「大舘さ~ん、検温 ...