Gimme Gimme Shock Treatment 其の6
「うぅっ……」
ヘンタイロスは絶句した!
なんと、自身が切り分けたネタとアヘイジが切り分けたネタの味が違うのだ!
驚きのあまり声が出ないヘンタイロスを見て、アヘイジはニヤリと笑って理由を説明しはじめた。
「兄ちゃん、包丁はノコギリじゃねえ。何度も押したり引いたりして切っちゃあ細胞が潰れて味が落ちちまう。包丁は引いて使い一度で切る、これが職人の技よ」
「しょ……職人の技……」
職人の技、その神髄はスピードにあり!
アヘイジが言わんとするところを悟ったヘンタイロスは生唾を飲み、震える手で自ら寿司怒雷武のスイッチに手をかけた。
「アァッバァバァパパパッバァッ~! ブブブブ……ボォッポオォ~ッ!」
過酷な料理修行を覚悟して自らスイッチを入れたヘンタイロスの髪は逆立ち、体からは湯気が立ち上っている。
寿司怒雷武の凄まじい威力に全身が痙攣し、白目を剥いているものの、それでもヘンタイロスは自由にならない我が身を動かして包丁を握り、柵からネタを切り分けた。
「ポアァ~ッ! ペイィッ!」
間抜けな奇声を発しながら自由にならない体で切り分けたネタをアヘイジが口に入れ、満面の笑みを浮かべながら叫んだ。
「上出来じゃ兄ちゃん! 包丁を引く、その動きのスピードを上げて基本を習得するのじゃ!」
アヘイジが寿司怒雷武で痙攣するヘンタイロスに向かって喝を入れたときだった。
「みつけたぜえ~っ! 俺にだけ金を払わせやがって~っ!」
遠くから聞き覚えのある声で喚きながら、もの凄い勢いで誰かが走り寄って来たのだ!
見れば、向かってくるのはポコリーノである。
ポコリーノはカクカクしながら凄い勢いで走ってきており、それを見たザーメインが忌々しそうな顔で舌打ちした。
「ザーメイン~ッ! ヘンタイロス~ッ! 俺が便所に行ってる間に逃げやがったな~っ!」
怒りの形相のポコリーノが叫んだ瞬間、ザーメインは目を閉じてブツブツ言いながら立ち上がり、両目をクワッと見開くと大声で気合をかけたのだ!
「どりゃあぁ~っ!」
「うおおぉぉぉっ!」
気合一閃!
ザーメインの魔術が炸裂すると、ポコリーノの上前歯二本が突然伸びて地面に突き刺さった!
歯は勢いよく伸び、あっという間に屋根より高いところまでポコリーノを押し上げていく。高所を苦手とするポコリーノは手足をジタバタさせて泣き叫んでいた。
「たっ……助けてくれ~っ! 高いところは苦手なんだぁっ!」
「馬鹿者め……しばらくそのままでいるがよかろう。アヘイジさん、ヘンタイロス、ワシのことはいいから商売に出てくれ」
なんという惨い仕打ち!
ザーメインはポコリーノに食事代を払わせただけでなく、二人が食い逃げ同然に姿を消したことを怒るのにも容赦しなかったのである!
泣き叫ぶポコリーノを痙攣する体で見上げたヘンタイロスは、面倒はご免とばかりに片づけを済ませ、アヘイジと二人で屋台を引き街中へ消えていった。
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