Gimme Gimme Shock Treatment 其の5
白目を剥き痙攣するヘンタイロスの頭からは、薄っすらと煙さえ立ち上っている。アヘイジは全身を痙攣させるヘンタイロスを満足そうに眺めると、寿司怒雷武のスイッチを切った。
「ポォゥッ! グゲッゴォ……」
寿司怒雷武の衝撃から解き放たれたヘンタイロスは力なく地面に倒れ込み、呼吸を荒げて咳込んでいる。
ヘンタイロスは怒りの形相でアヘイジを睨みつけ、大声で怒鳴った。
「ちょっとアンタ! ワタシを殺す気なのん!?」
ヘンタイロスを見つめるアヘイジは頭を横に振り、突然涙を流しはじめたのだ!
「寿司怒雷武、その理論は完璧じゃが、凄まじい威力に耐えられる者がいなかった。今までの弟子は皆、最初の通電で黒コゲになって死んでいった……。じゃが、あんたは見事耐え抜いたのじゃ。やはり兄ちゃん、あんたならやれる!」
幾多の弟子を黒コゲにした装置を自分に試したアヘイジに、ヘンタイロスは殴りかかりたい衝動に駆られ立ち上がったが、握り締めた拳を振り上げた瞬間、耳にザーメインの声が飛び込んだ。
「待てヘンタイロス。寿司怒雷武で殺されかけ怒るのは分かるが、あれに耐えたのは貴公のみ。これで貴公は正式にアヘイジさんの料理を学べるのじゃ。夢にまで見た料理人、それも超一流の料理人の頂点に立つ料理を」
ザーメインの言葉に、ヘンタイロスは振り上げた拳をゆっくりと降ろし、大きく深呼吸して心を落ち着かせた。
ザーメインの言うとおり、ここでアヘイジを殴っては料理人の道が遠のく。しかもアヘイジは超一流を超越した料理人なのだ。弟子入りできるチャンスは一生に一度しかないだろう。
ヘンタイロスは再び深呼吸して怒りを鎮め、ザーメインに向かって言った。
「寿司怒雷武の威力は分かったけど、お寿司を握るのになんの関係があるのよん?」
「寿司怒雷武は雷の力で人体を支配し、体に極限のスピードを与えるのじゃ。寿司に人体の熱は禁物。寿司怒雷武での修業とは、極限のスピードを保ったまま寿司を握れるようにするのが眼目じゃ。ヘンタイロス、凄まじいスピードで痙攣しておった貴公の体、寿司怒雷武を装着したまま自在に操り、寿司を握れるようにするのじゃ!」
クワッと目を見開き大声をあげるザーメインに気圧され、ヘンタイロスは無言で頷く。
「それじゃ兄ちゃん、明日の朝早く市場に仕入れに行くから、夜明け前にここで待ち合せようじゃないか。今日は店を閉めるまでの間、ネタの仕込みと本手返しの握りを教えよう」
そう言うとアヘイジは手招きでヘンタイロスを呼び寄せ、取り出した魚を三枚に下ろしはじめた。
「兄ちゃん、やってみろ」
ヘンタイロスは包丁を握り、目の前の魚を三枚に下ろしはじめる。その様子を見たアヘイジは、左手で顎を擦りながら小さく頷いた。
「ほう、兄ちゃん、少しは包丁が使えるようじゃな。魚を柵にしたら握る分だけ切ってみろ」
アヘイジは自分が三枚に下ろした魚を切って手本を見せると、同じものを作るようヘンタイロスに指示する。
見よう見真似で魚を切り分けたヘンタイロスを見て、アヘイジはニヤリと笑った。
「フフフ……見た目じゃ違いが分からんじゃろうが、食えば違いが分かる。ワシが切ったネタと兄ちゃんが切ったネタを食ってみろ」
何をバカなことを……アヘイジが言った違いが分からないヘンタイロスは、自分が切ったネタを食い、続けてアヘイジが切ったネタを食ってみた。
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