ハゲと喫煙
――ハゲ、それが俺の病の名。
この病気が如何に辛い病気か、同士諸君なら十分理解している事だろう。抜けた髪を見るたびに心を痛め、鏡に映った己の頭髪を見ればカツラへの恐怖に恐れ慄く。
多くの男がかかる不治の病、現代医学では完治が難しいのは誰でも知っている『天然脱毛症』に犯され始めたのは数年前。
この病気にタバコが悪いのは承知しているが、どうしても止められない。抜けていく我が頭髪を見るとタバコを止めなければ、と思うのだが、長年の愛煙習慣とニコチン中毒の壁は厚く、つい吸ってしまう。
仕事中にガムを噛むのは無理だし、かといって奥に引っ込んでガムを噛むのも難しい。それに食後の一服が無くなるのはなんとも寂しい。
しかしタバコを止めなければ、俺の髪は確実に無くなる!
この恐怖、そしてジレンマ。
髪のためにもタバコは止めたいし、なんといっても健康に良くない。
このままタバコを吸い続けて癌に侵され、ハゲる前に壮絶な最後を遂げるというロックンロールな人生を歩むか、それともタバコを止め、天然脱毛症という難病を克服して髪をフサフサな状態に戻し、家族に囲まれ畳の上で大往生する、幸せに寿命を全うする人生を歩むのか……。
AGA治療も考えたが、なんといっても小遣いを貰っている身、我が嫁はAGA治療には否定的だ。
「ハゲ治療を健康保険対象に!」という趣旨のサイトを立ち上げて全国のハゲに呼びかけ、国会議員の先生方や厚生労働省に訴えるか?
解散総選挙の今、どこかの政党が「ハゲは天然脱毛症という病気なのです! 健康保険適用対象にしようではありませんか!」と訴えれば、もの凄い支持率になるはずだ。
ACでCMを作り、「もう一度、夫にフォーリンラブ」なんてTVで流せば主婦層も取り込めるだろう。
街頭演説で主義主張が違う方々に「帰れ!」コールをされても、全国からハゲが押し寄せ、「お前らが帰れ!」と守ってくれる。
――集まるぜぇ、全国のハゲが!
何か良い方法はないものか……。ハゲはイヤだ。カツラは被りたくないのだ!
やはり禁煙して脱毛を遅らせるしかないのだろうか?
俺は今、間違いなく人生の岐路に立たされている。
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