第一話 Knife Edge 其の4
金の事ではザーメインは頼れない。だからといって、まともに稼いでも一年以上かかるだろう。やはりここは、ザーメインの知恵に頼るしかない。
ポコリーノは意を決し、今だ啜り泣くヘンタイロスを連れてザーメインの家に行く事にした。
「ヘンタイロス、ここはザーメインの知恵に頼るしかねえだろう。家に行ってみようぜ」
涙を拭きながら頷くヘンタイロスを伴い、ポコリーノはザーメインの家に向かう事にした。
幸いにもザーメインの家はポコリーノの家と同じ通りに在る。ポコリーノはザーメインの家を飛び出した時、違う街へ向かおうとしたものの金が無い事に気づき、ザーメインの家と同じ通りにある空き家に寝泊りするようになった。それ以来、空き家を不法占拠して喧嘩屋稼業で食い繋いできたのだ。
ベラマッチャの身を案じつつ、ヘンタイロスを慰めながらポロスの街の中を歩くポコリーノは、そんな昔の事をふと思い出し、足元を見ながらクスッと笑った。
金が無いのは今も昔も変わらない。自分は生きていくために狡賢い知恵を少しつけただけで、周りが変化しているだけの様に思える。
ザーメインの家が見えてくると、もの思いに耽っていたポコリーノは我に返り、久しぶりに頭を使った為に感傷的になっちまったかと密かに自虐的な笑みを浮かべた。
ザーメインの家の前に立ち、扉をノックすると中から声が聞こえる。扉を開けるとザーメインは椅子に座り、机の上に開いた書物を見つめながらブツブツ何事か呟いていた。
ポコリーノとヘンタイロスは家の中に入り扉を閉めると、ザーメインに声を掛けた。
「ザーメイン、ちょっと厄介な事になっちまったんだ……」
ポコリーノの言葉にザーメインは顔を上げると、読んでいた分厚い本を閉じて立ち上がった。
「まあ立っとらんで座るがよかろう」
ポコリーノとヘンタイロスが座るのを見るとザーメインは奥へ行き、紅茶を入れて持ってきた。
「厄介な事とな! 貴公ら二人の厄介事か? パンチョスは賞金稼ぎに出とったのぅ。ベラマッチャとシャザーン卿はどうしたんじゃ?」
ザーメインが二人の前に紅茶を置きながら尋ねると、ヘンタイロスが意を決し話し始めた。
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状況からすると、ベラマッチャたちをなんとかすべきところ。
ヘンタイロスは、借金を踏み倒さないのは、その町を安住の地としているのでしょうかね。
はてさて次回は?
コメントありがとうございます。