第六話 Horror Business 其の6
「もういいだろう。赤ちゃんの父親の元へ送ろう」
ベラマッチャが溢れ出る涙も拭かず、ヅラスカヤに近寄って身体を抱きかかえて起こすと、シャザーン卿たちと一緒に近づいて来たヘンタイロスが声をかけてきた。
「ちょっ、ちょっと待ってよん。確かスッペクタは街で知り合った熟女と姦ったって言ってたわよん? まさかアンタ……」
ヘンタイロスの言葉に全員がハッと息を呑んだ。スッペクタは熟女とのスペクタクルな体験と、その性技の凄さとを語っていたのだ。
ベラマッチャが両腕の中のヅラスカヤを見ると、ヅラスカヤは魂を抜かれて呆けた様な表情で顔を上げ、消え入りそうな声で呟いた。
「そうよ……。この子の父親はスッペクタよ……」
衝撃の告白に、その場に居る全員が雷に打たれたかの様に立ち尽くした。お腹の子の父親は、自分の子であるスッペクタだと言うのだ!
「なんてこった……」
「近親相姦とはな……」
ポコリーノとパンチョスは一言だけ口にすると、下を向いた。あまりにも悲惨な事実に、ショックを受けている事は想像に難くない。見れば、シャザーン卿とヘンタイロスも下を向いている。
ベラマッチャもショックを受け、何も言う事ができなかった。エージェントなどという怪しい仕事に手を染め人生を狂わせたヅラスカヤにしてやれるのは、紳士として抱きしめてやる事だけである。
「オォ……なんと哀れなレディよ……」
ベラマッチャがヅラスカヤを抱きしめ、再び涙を流した時だった。
「ハァ~ッハッハッハ! ヅラスカヤを追い詰めるとは大したものだ渡世人どもよ!」
突如として、部屋中に男の笑い声が響き渡ったのだ!
「誰かね!?」
ベラマッチャは心臓が飛び出るほど驚き、ヘンタイロスは腰を抜かして床にへたり込んだ。全員が顔を上げて部屋中を見回すが、人影はどこにも見当たらない。
「どこを見ている! 私はここだ!」
「カツラスキーか!?」
声の主を探し、再び全員で部屋の中を見回していると、ポコリーノが声をあげながら壁を指差した。
「うぉッ! あッ、あそこだ~ッ!」
ポコリーノが指差した先を見たベラマッチャは、口を半開きにして驚愕の表情を浮かべた!
壁一面に据え付けられている人形の首の一つが、目を見開きギョロリとベラマッチャたちを見ながら高笑いしていたのだ!
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