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第4回ツギクル小説大賞で、当サイトの作品「夢幻の旅」が奨励賞を受賞しました。
管理人:Inazuma Ramone

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第五話 Frankenchrist 其の11

カツラ大戦争

 シャザーン卿は、部屋の隅から椅子を持ち出してベッドの脇に置くと、ジロリとヅラスカヤを見てから椅子に腰掛けた。

「身篭っているのが判ったのは何時じゃ?」

「たった今よ」

 ヅラスカヤはチラリとシャザーン卿を見て答えると、再び天井を見上げ口を噤んだ。

「では質問に答えてもらおうか。答えねば腹を踏みつけてくれるぞ」

 シャザーン卿はニヤリと嗤い、尋問を開始した。

「貴様がアシスタントをしとるヅラ師の名前は?」

「カツラスキーよ……。K.G.B.の凄腕カツラ職人。彼を敵に回したら命がいくつあっても足りないわ」

「カツラスキーは何処におる?」

「ザブルド川の中州にある廃屋よ。屋内を修繕してアジトにしてる」

「暴行族にカツラを被せて操ったのは何故じゃ?」

「私は知らない。アシスタントは詳しい事を聞かされないから」

 シャザーン卿は眉毛をピクリと動かして椅子から立ち上がると、ベッドに右足をかけた。

「答えねば腹を踏み潰すぞ!」

「ほ、本当よ! お願い! 赤ちゃんだけは助けて!」

 ヅラスカヤは涙目になり、シャザーン卿に懇願するものの、シャザーン卿は疑惑に満ちた目でヅラスカヤを見つめている。

 後ろで見ていたベラマッチャは、ヅラスカヤの言葉に嘘はないと確信して口を挟んだ。

「キミィ、レディの言う事に嘘はなさそうだ。尋問を続けたまえ」

 シャザーン卿は、厳しい視線をヅラスカヤに向けながらゆっくりと足を下ろし、何度か顎鬚を撫でた後、椅子に座り直して尋問を再開した。

「ワグカッチで動いているエージェントは貴様とカツラスキーだけか?」

「私たちだけよ」

「ではアジトに案内して貰おうか。ヘンタイロス、女の上着を持ってまいれ」

 シャザーン卿は尋問を終わらせると、ベッドに縛ったロープを解き、ヅラスカヤの身体にコートを着せた。

「身体は縛ったままにしておく。変な気を起こされては堪らんからのう」

 シャザーン卿は、ヅラスカヤの手足とベッドを結び付けていたロープを、ヅラスカヤの腰の所に縛り付け、そのロープをコートのボタンの間から出した。

 ベラマッチャたちも急いで旅支度を整え、ヘンタイロスの背中に荷物を括り付ける。忘れ物がないか部屋を見回していると、魔ヅラが入っているバッグが目に留まった。

 ベラマッチャはバッグをヘンタイロスの背中の荷物に括り付け、シャザーン卿に準備が整った事を知らせた。

「諸君、すぐ出発しようではないか」

 ベラマッチャは、ヅラスカヤのコートから出ているロープを握り部屋を出た。

 ロビーでは受付の女が怨念の篭った視線を投げ付けていたが、そんな事に構っている暇はない。

 ホテルを出て、シャザーン卿がヘンタイロスに騎乗したのを見たベラマッチャは、ヅラスカヤの身体に繋がるロープをヘンタイロスに手渡し、ザブルド川の廃屋目指して出発した。

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カツラ大戦争

Posted by Inazuma Ramone