第三話 Substitute 其の1
ベラマッチャたちはスッペクタを伴い、マラッコの屋敷の前まで来ると、門の周辺に若い者がいるか様子を窺った。マラッコ一家の者に見つかれば、暴行族のリーダーであるスッペクタは殺されるだろう。
警戒しながら門をくぐり、人目に付かぬよう敷地の隅にある家屋に行くと素早く家の中に入り、一目散に二階へと上がって行った。
部屋に着くとベラマッチャたちは椅子に座り、スッペクタにも部屋の隅にある椅子を持って来て腰掛けるよう言った。
「ヘンタイロス君、紅茶を淹れてくれたまえ」
ベラマッチャの言葉にヘンタイロスが頷き、鼻唄を歌いながら紅茶の準備を始めた。
ポコリーノは紅茶を淹れるヘンタイロスの背中を一瞥すると、ベラマッチャとシャザーン卿の顔を見ながら、ポツリと呟いた。
「それにしても、カツラを被ると記憶が飛んじまうとはな」
「おそらく何らかの魔術で作られたカツラじゃろう。ザーメインならば何か分かるかも知れんのう」
「ザーメインか……。ワグカッチからポロスまでは一日の距離だ。行って情報を得たほうがいいかも知れんな」
「そうするか。そう言えばパンチョスの野郎はどうしたんだ? ポン中の治療が終わって退院したんじゃねえのか?」
「むぅ、退院したとの手紙を貰ったが……」
三人で顔を見合わせて首を捻っていると、ヘンタイロスが紅茶を運んで来た。
「パンチョスならワグカッチに向かってる途中じゃないのん? また、あの五月蝿いロックンロールを聴かなくちゃなのねん」
ヘンタイロスの言葉に、ベラマッチャたち三人はドッと笑った。
「奴のギターは五月蝿いからのう」
「僕も、あんなに五月蝿い音楽は初めて聴いたよ。音楽とは美しい音色のものだと思うのだが、パンチョス君のロックンロールは五月蝿いほどいいらしいからな」
「まったくだぜ! きっと奴は難聴に違いねえ。いや、いくら五月蝿いって文句を言っても聞き入れねえんだから、精神も難聴なんだぜ、きっと」
「あれが音楽って言うんだから、心もポン中なのよん」
四人がパンチョスの悪口を言い合い笑っていると、突如、部屋の隅にある鎧が立ち上がった!
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