第四話 Death,Agony and Screams 其の7
落ち着いた様子で葡萄酒を飲むヅラスカヤに、ベラマッチャの背に悪寒が走った。
「人を殺し、血の海の中で横たわる死体を見ながら、よくもまあ血の様な色の葡萄酒を飲めるものだな」
ヅラスカヤはクスッと笑うと掌の中のグラスを舐り、テーブルの上に置いてベラマッチャをジッと見た。
「ウフフ……ヘンテコリンな面を被って正体を隠してるつもりかしら? アンソニー・ベラマッチャ。大紳士グッチ・ハマーの子孫にしてジャヴァー族の王子……。過度な正義感は身を滅ぼす事になるわよ」
ベラマッチャはギクリとした。やはり自分たちの事は調べられている。そうでなければ、面を被っている相手の名前など判る筈はない。
ヅラスカヤは、ベラマッチャたちを楽しそうに眺め回すとグラスの葡萄酒を手にし、一口飲んで話を続けた。
「そちらのケンタウルスは、住所不定・無職の男と、ケンタウルスの雌の間に生まれたオカマ、ヘンタイロス。フフッ、獣姦って気持ちイイのかしらね……。隣の男はブックジョウの賞金稼ぎ、カルロス・パンチョス。稼業の親と愛する女に騙されて、さぞ辛い事でしょうね。そう思わない? 右手のザーメインが作った二十八体目のゴーレム、ポロスの木製番長、ポコリーノさん。貴方、小学校くらい卒業したほうが良くてよ」
「うぅッ……」
ベラマッチャたちは絶句し、ただヅラスカヤを見つめるしかできない。
ヅラスカヤは妖艶な笑みを浮かべ、驚愕のあまり立ち尽くすベラマッチャたちを一瞥すると、ソファーの上に置いてあるバッグから何かを取り出し立ち上がった。
「ウフフ……。この黒い髪で作った『パンチパーマの魔ヅラ』って凄いのよ」
「魔ヅラ!」
驚き飛びのくベラマッチャたちに向かい、ヅラスカヤは魔ヅラを投げ付けた!
魔ヅラは、まるで意思を持っているかのように宙を舞い、逃げ惑うポコリーノの頭の上に落ちた!
「げぇッ!」
頭の上に魔ヅラが落ちた瞬間、ポコリーノの動きはピタリと止まり、白目を剥いて涎を垂らし始めたかと思うと、突如ベラマッチャたちに襲い掛かった!
「ポコリーノ君!」
「P.P.!」
「きゃあぁ~ん! ポコリーノん!」
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