夢幻の旅:あとがき
「俺は死ぬとき、残される妻に何を言うんだろう」
そう思ったのが、夢幻の旅を考えるきっかけでした。女性の寿命のほうが男性より長く、どう考えても先に死ぬのは俺だろうと。
書くなら夫婦の物語としてだけではなく、家族の死と、残された家族が死者について感じることを、自分の生死観で書いてみよう。
「天国も地獄もない。人は死んだら自然に帰る」という考え方を中心に、突然病気になった自分と家族、妻にも言えない秘密、親子の絆などを書いてみたつもりですが、第一話から読み返してみると、なんとまあ杜撰な出来。
いちばん最初に良美の最後のシーンが思い浮かび、そこに向かって終わるように考えはじめたんですが、最初光平は死ぬ予定ではなかったんです。
書きはじめようとしたとき、ハッピーエンドで終わっていい物語なのか悩んでしまい、そこで構成し直してホラーテイストを入れて光平も死ぬように直し、少々ミステリアスな感じにしてみました。
ラストは物悲しくジョニーを連れた良美の語りで終わらせましたが、犬のジョニーが重要な役割を果たすのは、実家で飼っていた犬の思い出からです。
もう十年以上前、母を一人残して離れた街で暮らしてましたが、実家には金太と名付けた犬がいました。
長生きな犬で、当時十八歳。
ある日の明け方、不思議な夢を見ました。実家のリビングで、庭に面した窓を背にコタツに入っていると、ガラスを引っ掻く音が聞こえ、窓を開けると金太が入ってきたんです。
コタツに潜り込み、筆者の太股にアゴを乗せる金太。しばらく会ってなかったので頭を撫で、言葉をかけました。
「金太、お袋と一緒にいてくれて、ありがとうな」
金太は嬉しそうな顔で目を瞑り、安心したように寝てしまいました。
その日、仕事から帰ると、実家の母から「金太が死んだ」と電話があり、明け方見た夢の意味を悟ったんです。あれは、金太が会いに来た夢だったんだと。
そんな思い出があったのでジョニーを登場させたのですが、もうちょっと登場させてもよかったかな、と思ってます。
自分としては、今までで一番良く書けたと思いますが、死んでいく人間を書く難しさ、描写力、重複した言い回しなど、きちんと書かないと伝わらないことが書けてなく、相変わらずグダグダで終わってしまいました。
この物語を読んでくださった方は、どんなことを感じるんでしょうか。
それが今、いちばん気になります。
「夢幻の旅」を書くのにインスパイアされた曲
Social Distortion – Cold Feelings
Hüsker Dü – Pink Turns To Blue
Poison Idea – Crippled Angel
Beowulf – Ain’t No Place Like Home
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