第七話 Head On A Pole 其の4
「どっ、どうなってやがるんだ……?」
パンチョスは戸惑いの表情で己のギターを見つめ、一言呟くと怒りの形相になりカツラスキーに向き直った。
「やるじゃない……」
パンチョスはギターを構え直すと、再びチャーミング・デスメタルを繰り出した!
「フッ、馬鹿め」
今度もカツラスキーが両手を忙しなく振ると、パンチョスのロックンロールはワルツに変化した!
パンチョスは身体の自由が利かないのか、引き攣った顔でカツラスキーが振る両手の動きに合わせて演奏している。
「うおおぉ~ッ!」
魔ヅラを振り乱しながら両手を動かすカツラスキーを見て、ベラマッチャは気づいた。カツラスキーはベントーベンの魔ヅラを被り、演奏者たるカルロス・パンチョスを指揮しているのだ!
ベラマッチャは指揮されるパンチョスを見つめながら魔ヅラの凄まじさに戦慄を覚え、全身に鳥肌を立たせた。
『魔ヅラ、真の威力を見せてやる』と言ったカツラスキーの言葉に嘘はなかった! おそらく魔ヅラは、ヅラ師が被る事により威力を発揮するのだ。カツラ使いの様に、他人の頭に被せて人を操るのは魔ヅラの副次的効果に過ぎないのだろう。そして魔ヅラが発揮する効果は、ヘアスタイルにより異なるに違いない。
やがてカツラスキーの動きが止まるとパンチョスは演奏を止め、白目を剥いてその場で仰向けに倒れた。
「パッ、パンチョス君!」
「パンチョス!」
ベラマッチャたちはパンチョスの無残な姿に仰天し、口々にパンチョスの名を叫んだ。だがパンチョスはピクリとも動かず、口から泡を吹きながら横たわっている。
「この野郎~、フザけた真似しやがってぇ~」
ベラマッチャの横に居たポコリーノが横たわるパンチョスの横を通り、カツラスキーを睨みながら前へ出た。
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