第二話 Teenage Robotomy 其の2
広場に近づくと、ベラマッチャは鋭い目で用心深く周りを窺い、後ろの三人に声を掛けた。
「行くぞ諸君」
サンドガサ・ハットの紐を締め直し、ベラマッチャは広場に向かって進んだ。その後をシャザーン卿、ポコリーノ、ヘンタイロスが続く。
広場は暴行族で埋め尽くされており、あちこちから歓声が聞こえて来る。広場の中央にある銅像の下、一段高くなっている所に三人の男が立っていた。
「ヅラスカヤ! ヅラスカヤ! ヅラスカヤ!」
暴行族たちは拳を振り上げながら『ヅラスカヤ』を連呼している。
銅像の下にいる中央の男が右手を高々と上げると、暴行族は叫ぶのを止め静まり返った。
「俺たちはヅラスカヤ様に忠誠を誓う! 俺たちはカツラに忠誠を誓う!」
男の叫びに暴行族たちは騒然となり、再び『ヅラスカヤ』を連呼し始めた。
暴行族の狂態を眺めていたベラマッチャは、このままでは埒があかないと思い、集団を掻き分けて銅像の下の男たちの所へ行く事を三人に提案した。
「諸君、おそらく銅像の下に立っている連中がリーダーだろう。あそこへ行き、まず彼等を説教しようではないか」
「だっ、大丈夫なのん? 凄い人数よん?」
「心配するなヘンタイロス。所詮、ガキの集団よぅ」
「銅像の裏側は暴行族が少ないようじゃ。廻り込んで、後ろから近づくのが良かろう」
四人は銅像の裏側から近づく事に決め、道を引き返して細い路地に入った。
路地を歩いていても、まだ暴行族の歓声が聞こえて来る。ベラマッチャは暴行族が叫んでいた『ヅラスカヤ』という名前に疑問を感じ、歩きながら三人に尋ねた。
「暴行族が叫んでいた『ヅラスカヤ』とは何者だろう? リーダーは他に居るのだろうか? それに『カツラに忠誠を誓う』と言ってたが……」
「余もそれを考えておった処よ」
「女の名前のようねん。暴行族のアイドルかしらん? 大勢の男のアイドルなんて、ワタシ嫉妬しちゃうわん」
「リーダーだったら広場に居るんじゃねえのか? どっちにしろ、行けば分かるさ」
「むぅ……」
路地を歩きながら、ベラマッチャは言い知れぬ不安を感じ始めていた。
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