第七話 Head On A Pole 其の5
ポコリーノはサンドガサ・ハットとカッパ・マントを脱ぎ捨てると、再びカツラスキーを睨む。木人たるポコリーノのその姿は、まるで寺院で見る仁王像の様である。
魔ヅラの凄まじさを見せ付けられたベラマッチャは、ガクラン姿のポコリーノの背中を見つめるしか出来ない。
ポコリーノがファイティング・ポーズを取り、ジリジリとカツラスキーとの間合いを詰め始めると、シャザーン卿が口を開いた。
「待てポコリーノ、どうやら余等はとんでもない男と戦っとるようじゃ」
ベラマッチャの横でポコリーノとカツラスキーを見つめていたシャザーン卿が、サンドガサ・ハットとカッパ・マントを脱ぎ、鞭を手に取ってポコリーノに向かって歩いて行く。
ポコリーノの横で立ち止まったシャザーン卿は何度か鞭を振るって地面を叩くと、ポコリーノに声を掛けた。
「ポコリーノ、ここは男の勝負を捨てて二人で戦うんじゃ。この男、只者ではないぞ」
「フフッ……。風の旅団の頭目、シャザーン卿とポロスの木製番長、ポコリーノのお出ましか。だが二人で私が殺れるかな?」
二人を見ても余裕の表情を浮かべるカツラスキーは、両手で空中を漂う魔ヅラを掴んだ。
「見るがいい! 魔ヅラ三段増毛術!」
カツラスキーはニグロヘアーの魔ヅラと、バーコード禿の魔ヅラをベントーベンの魔ヅラの上に重ねて被った!
カツラスキーの頭は異様な盛り上がり方になり、空中を漂う魔ヅラは、まるでカツラスキーからエネルギーを補給しているかの様に旋回速度が速くなる。
カツラスキーが魔ヅラを被ると同時にポコリーノとシャザーン卿も動き、僅かづつではあるが間合いを詰め始めた。
「ニグロに禿ヅラ? 何の力があるのか知らねえが、俺に殴り倒せねえ奴はいねえぜ?」
「フフッ……。はたしてそうかな?」
ポコリーノは両腕を挙げてガードを固めたまま、カクカクとした挙動で素早く動き、一瞬でカツラスキーの懐に入った!
「キエェッ!」
気合一閃! ポコリーノがカツラスキーの顔面目掛けて殺人パンチを繰り出した! カツラスキーもポコリーノのパンチに合わせ、素人とは思えない素早さでパンチを繰り出す。
ポコリーノの右拳とカツラスキーの左拳がお互いの顔面を捉え、二人の動きが一瞬止まった。そこへポコリーノの背後から、シャザーン卿がカツラスキー目掛けて鞭を振るおうとした時だった!
殺人パンチを決めた筈のポコリーノが、パンチを繰り出した体勢のまま力なく地面に崩れ落ちたのだ!
シャザーン卿は鞭を振るうのを止め、身体を硬直させたまま驚愕の表情でカツラスキーを見つめた。
「クッ、クロスカウンター……」
カツラスキーは拳闘士が使う高等技、クロスカウンターを駆使してポコリーノを倒したのだった。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません