第七話 Head On A Pole 其の1
「ヒイィ……何で壁から顔が出てるのよん……」
「このアジトは一部屋だけだ。隠し部屋が作れる筈がねえ……」
ヘンタイロスとパンチョスも、愕然としながら首を見つめている。パンチョスが言うとおり、壁の向こう側は明らかに建物の外になるのだ。横に居るシャザーン卿ですら、信じられないという表情で首を見つめていた。
入り口の正面にある壁の隅、真ん中辺りから顔を出している男は高笑いを止めると、喋りだした。
「フフフ……。貴様等ごときに見破れるカラクリではない。私のヅラスカヤを苦しめた報いを受けさせてやる」
男が言い終わると、突然部屋が壊れるかの様な大音響が響き渡り、男の首がある壁が動き出した!
「げえッ!」
「うおッ!」
「こ、これはん……」
「ま、まさかッ!」
「でッ、出おったッ!」
ベラマッチャたちが唖然と眺める中、壁は真ん中を軸としてゆっくりと回転し始め、徐々に男が姿を現し始めた。
姿を現した男は中腰の体勢で外壁に両手を付き、開けた穴から顔を出していたのだ! 恐らく男は、その体勢のまま力を込めて壁を押し、回転させたに違いない。
やがて壁の動きが止まると男は壁から顔を抜き、ベラマッチャたちに向き直った。
男の想像を絶するカラクリに、ベラマッチャの肌は粟立ち身体が震えだしたが、恐怖を振り払うため、紳士らしく毅然とした態度で問いかけた。
「君がヅラ師のカツラスキー君かね?」
「私がK.G.B.のエージェント・カツラスキーだ」
やはり男はカツラスキーだった! 男がカツラスキーと名乗った瞬間、ベラマッチャたちは皆、身体に力を込めた。
カツラスキーはベラマッチャたちからヅラスカヤに視線を移すと、優しい声でヅラスカヤに話しかけた。
「ご苦労だったヅラスカヤよ。すぐに終わらせるから、退いていなさい」
ベラマッチャはチラリとヅラスカヤを見たが、どうも様子がおかしい。カツラスキーの問いかけに答えず、下を向いたままである。
「レディ、大丈夫かね?」
ベラマッチャがヅラスカヤに話しかけた時であった。
「ヒャァ~ッハッハッハッハッハ!」
ヅラスカヤは立ち上がったと思うと、涎を垂らしながら上を向き笑い始めたのだ。
ベラマッチャたちはおろかカツラスキーもその場に立ち尽くし、笑うヅラスカヤを呆然と眺めていた。
「ヒィ~ッヒッヒッヒッヒ!」
「く、狂った……」
ポコリーノは笑うヅラスカヤを見ながらポツリと呟いた。
髪を振り乱しながら笑うヅラスカヤはベラマッチャたちとカツラスキーの間を通り、部屋の扉を開けて外へ出て行った。
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