第一話 Violent World 其の2
マラッコは若い者を呼び、賭場で遊んでいる客人たちを呼んでくるよう伝えると、顔役と二人、居間で待つ事にした。
「顔役、暴行族退治に、うってつけの連中がいるぜ」
「うってつけの連中? 誰だい? その連中は?」
「ディープバレーの兄弟の身内だ。今、俺の賭場で遊んでる」
「イザブラー親分の……。本当に頼りになるのかい? その連中は?」
顔役は怪訝な顔で聞き返した。
「ほれ、少し前にカダリカ一味を殺っちまった連中がいたろう? その連中よ」
「カダリカ一味を殺った連中!」
顔役は目を丸くしてマラッコを見た。
「まさか噂の連中がワグカッチに居るとは……。親分、その連中、本当に助けてくれるのか?」
マラッコは右手で顎を摩りながら、ニヤリと笑った。
「連中は渡世人だ。俺に一宿一飯の恩義がある。頼めば嫌とは言えねえさ」
俯きかげんの顔役がパッと表情を明るくし、マラッコの顔を見た。
「なんでも連中は、たった五人でカダリカと百人からの兵隊をブチ殺し、用心棒の魔術師まで殺っちまったそうだ。フッフッフ……世の中には凄え奴等がいるもんだぜ……」
「有難い! マラッコの親分、ぜひ話をつけてくれ!」
顔役は全て解決したかの如く喜び、マラッコの手を握って何度も礼を言った。
暫くすると居間の扉がノックされ、若い者が入って来た。
「失礼しやす。親分、客人方が戻りやした」
「客人方、遠慮しねえで座ってくれ」
若い者が扉を閉め居間を出て行くと、ベラマッチャとポコリーノはサンドガサ・ハットとカッパ・マントを脱ぐと軽く挨拶し、椅子に座った。
「客人方、俺の隣に座ってるのは、ワグカッチの顔役だ。今日は顔役から、客人方に頼み事があるそうだ」
ベラマッチャが訝しげな顔で顔役を見ると、顔役が話を切り出した。
「――渡世人さん方、なんでもカダリカ一味を殺っちまったそうだね」
「むぅ、カダリカ一味を始末したのは、確かに僕らだが……」
「その腕を見込んで頼みがあるんだ。今、ワグカッチの街じゃ、暴行族って言われる若い連中が問題になってるんだ。集団になって馬を乗り回したり、街の連中を袋叩きにしたりで、やりたい放題やってやがる」
ベラマッチャはワグカッチに来た時に見た、ド派手に飾り付けた馬に乗って暴走する連中を思い出した。
「そんなチンピラども、稼業人が出て行けば大人しくなるんじゃないのかね?」
ベラマッチャの言葉に、マラッコが口を挟んだ。
「ワグカッチは一家が多いといっても、小さな一家ばかりだ。ワグカッチの稼業人を全員集めても、連中の半数にもならねえ。最近じゃ暴行族は、数を頼りに稼業人にまで喧嘩を売ったり、強請りを働いたりする始末だ。俺の賭場も、連中の賭場荒らしで客が減っちまってる」
「むぅ……稼業人にまで……」
ベラマッチャが腕を組んで考えていると、隣に座っているポコリーノが答えた。
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