第八話 Give It Up 其の5
「お目覚めかね? ヘンタイロス君。早速で申し訳ないが、マラッコの親分がカツラスキーの手先と分かった以上、ゆっくりしている訳にはいかん。早く墓穴から出たまえ」
ベラマッチャは手を差し伸べ穴から出て来るのを手助けすると、ポコリーノの厭味に満ちた声がヘンタイロスに投げ付けられた。
「ケッ! いいご身分だぜ! 墓穴の中でイッちまうとはな!」
「何よん! 悔しかったらアンタもイッてみなさいよん!」
ポコリーノの言葉に、ヘンタイロスは目を吊り上げて言い返す。だが論点のずれたヘンタイロスの言葉に、ポコリーノは言い返す気も無くなったらしく溜息をつき、見ていたベラマッチャも仲裁に入るのが馬鹿馬鹿しくなり、放っておくことに決めた。
するとシャザーン卿がベラマッチャの横を通り、ポコリーノと睨み合うヘンタイロスに近付いていく。
何事かと見ると、シャザーン卿はヘンタイロスに騎乗して大声を発した。
「貴様等、顔役の所へ行くぞ!」
号令一発、ヘンタイロスはポコリーノを睨むのを止め、ベラマッチャも、ポコリーノも、パンチョスも呆れ顔を引き締め、ヘンタイロスを駆るシャザーン卿に続き歩き始める。
ベラマッチャは頼もしそうにシャザーン卿を眺め、同時にワグカッチの顔役がまだ生きている事を願った。
だがベラマッチャたちにとって事態は深刻である。マラッコには渡世人として一宿一飯の恩義があり、カダリカへの復讐を手助けしてもらったディープバレーの大博徒、シーマ・イザブラーの兄貴分でもあるのだ。
マラッコと顔役に頼まれて始めた暴行族退治が、王宮の職人三十六房・K.G.B.まで絡んだ大掛かりなワグカッチ乗っ取りのコマの一つとして使われていたとは……。
顔役はワグカッチの自治を守るためにイザブラーに相談していたというが、正義感からマラッコを成敗しても、イザブラーの怒りに触れるかもしれない。
悩んだベラマッチャは最良の道を探そうと、皆に相談する事にした。
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ヘンタイロスは変態だからおもしろいのかなあ。私の作品では指定席キャラですね(笑)