第八話 Give It Up 其の4
「あぁッ! くうぅッ……」
聞くのも痛い鞭の音と共に、ヘンタイロスの野太い喘ぎ声が段々と大きくなってきたかと思うと、雄叫びのような大絶叫をあげた。
「くうぅッ! だめぇぇぇ……。ひぃぃぃぃぃ……」
鞭打つシャザーン卿の動きが止まり墓穴の横に座り込むと、ポコリーノとパンチョスが立ち上がり、墓穴に向かって歩き始めた。それを見たベラマッチャも立ち上がり、後を追う。
墓穴の縁ではシャザーン卿が大きく肩で息をしており、穴の中ではヘンタイロスが白目を剥いて悶絶していた。
ヘンタイロスからパンチョスに目を移すと、パンチョスは自分の名前が書かれた卒塔婆とヘンタイロスを交互に見ながら、心底嫌そうな顔をしている。
ベラマッチャはもう一度ヘンタイロスを見ると、墓穴の周りにいる三人に声を掛けた。
「諸君、カツラスキーが言っていた事が気になる。ワグカッチの顔役の所へ向かおうではないか。まだマラッコの親分の手にかかってなければいいのだが……」
「そうだぜ! 顔役が危ねえ!」
ポコリーノも頷き、同意を促す様にシャザーン卿とパンチョスの顔を交互に見ている。
「あぁ、事は急を要するぜ」
パンチョスは頷き、チラリと墓穴を見た。
「フッフッフ……。今度はこのオカマを棒でつつくかい?」
不敵な笑みを浮かべながらヘンタイロスを指差すパンチョスに、シャザーン卿が答えた。
「不埒者はこうやって起こすんじゃ!」
言うが早いか、シャザーン卿は再び鞭を取り、失神しているヘンタイロスの背中目掛けて振り下ろした。
ビシィッ! という音と共にビクンと身体を震わせるヘンタイロスの背中に、シャザーン卿がもう一度鞭打つと、ヘンタイロスはゆっくりと目を開いた。
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