第六話 Horror Business 其の4
更に眺め回すと、額から頭頂にかけて禿げあがっているカツラまである。
「見たまえヘンタイロス君、禿げヅラまであるぞ」
ヘンタイロスが振り向くと、確かに禿げたカツラがあった。
「本当だわん。禿を隠すためなのに、なんで禿たカツラがあるのかしらん?」
ベラマッチャとヘンタイロスが禿ヅラを見ながら、何の用途で用いるのか議論している時であった。
「あッ!」
禿ヅラに見入っていたベラマッチャの手に力が入ってない事を見抜いたヅラスカヤに、隙を突かれ逃げられたのだ!
ヅラスカヤは転がる様に反対側の壁際まで走ると、大きく息をつき笑い声をあげた。
「ホ~ホッホッホ! これだけの魔ヅラがあれば、貴方たちを殺すのなんて簡単だわ! よくも散々痛ぶってくれたわね!」
ヅラスカヤは壁に付けられている人形の頭から魔ヅラを取ると、ベラマッチャたち目掛けて投げ付け始めた。
「うおぅッ!」
まるで意思を持っているかの様に頭目掛けて飛んでくる魔ヅラを、ベラマッチャたちは必死に避けるしか術がない。如何にサンドガサ・ハットを被っているとはいえ、被り物で魔ヅラを防げない事はポコリーノが身体で証明している。このままでは魔ヅラに殺られるのは時間の問題である。
「ひえぇッ! 死んじゃうん!」
長髪の魔ヅラがヘンタイロスの頭に向かって飛んで来た時たった。
ベラマッチャの横にいたパンチョスが、カッパ・マントの下からギターを取り出して弾き始めた!
「シャバダバダァッ!」
シャウト一発! カルロス・パンチョス必殺のチャーミング・デスメタルが炸裂し、魔ヅラはバタバタと床に落ちて行った。
「くぅッ!」
ベラマッチャたちはヅラスカヤに飛び掛ろうとするも、ヅラスカヤは唇を噛んで再び魔ヅラに手を掛けようとしている。
ベラマッチャたちは隙を窺いながらジリジリと間合いを詰めるが、ヅラスカヤも魔ヅラを投げ付けるタイミングを計っており、容易に飛び掛れない。
ベラマッチャは間合いを計りながら、ヅラスカヤに話しかけた。
「キミィ、暴れてはお腹の赤ちゃんに悪いぞ」
「五月蝿い! 私は十七歳で産んだ子に死なれてから、ずっと新しい子供が欲しかったんだ! 誰の子でもいい……近づいてきた男達とは片っ端から寝て、子供が出来るのを願った。流行り病を患い、二度と子供を授かれないと医者から聞かされ、諦めていた私が妊娠したんだ。キャリアウーマンの意地に賭けて、シングルマザーとして、この子を立派に育ててみせる! 貴様等に私とお腹の子の未来を邪魔されてたまるか!」
ヅラスカヤはベラマッチャを睨みながら、大声をあげた。
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