第四話 Death,Agony and Screams 其の1
ベラマッチャたちは途中の草原で野宿し、マラッコの屋敷を目差した。
エージェントへの恐怖がそうさせるのか、無駄話をしている者は一人もいない。皆、緊張した面持ちで黙々と歩く。
やがてワグカッチの城門が遠くに浮かび上がり、一行は急ぎ足で街へ入って行った。
マラッコの屋敷に到着し、サンドガサ・ハットとカッパ・マントを脱ぐと、ヘンタイロスが淹れた紅茶を啜りながら、誰からともなく今後の事についての相談を始めた。
「今夜じゃ。エージェントは暴行族が活動しなくなった事に疑惑を懐き、何が起きたのか調査したじゃろう。今夜エージェントに戦いを挑むんじゃ」
シャザーン卿の言葉に、一同は頷いた。確かに暴行族が街を荒らさなくなれば、魔ヅラを被せた股ドールが行動を起こすだろう。おそらく自分たちの事は調べあげられている。モタモタしていたら、エージェントから先制攻撃を受けかねない。
「まずはスッペクタ君にカツラを被らせたまま、股ドールが潜伏していると思われるホテルへ行ってみようではないか」
「それがいいわねん。スッペクタには、魔ヅラに操られてるフリをしてもらえばいいわん」
ヘンタイロスの言葉に、スッペクタはビクンと身体を震わせた。ヘンタイロスを見つめるスッペクタの顔から血の気が失せ、口からはガチガチと歯が当たる音が聞こえてくる。
「おっ、俺はまた、あの部屋へ行くのか……。やっぱり行かなきゃいけねえのか?」
震えが止まらず、手に持ったティーカップに入っている紅茶が大きく揺れている。
スッペクタは、無言で見つめるベラマッチャたちに目を遣ると下を向いてしまい、身体の震えはいっそう大きくなって、とうとうカップから紅茶が零れ始めた。
「スッペクタ君、そう心配するな。幸いシャザーン卿は身体を透明にする、魔術で作られた腹巻をしている。諸君、シャザーン卿に偵察してもらい、股ドールだけなら部屋へ突入、ヅラ師もいれば彼等が寝るまで待ち、寝込みを襲おう」
ベラマッチャの提案に、ポコリーノとパンチョスが頷いた。
「それしか無さそうだな……」
「あぁ……。まずは、どんな連中か見極めが必要だ」
一同の意見は一致し、夜の闇に紛れて行動を起こすまでの間、各自休息を取る事になった。
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