第三話 Substitute 其の2
「うぉッ!」
ベラマッチャたちが驚き、椅子に座ったまま見ていると、鎧はギシギシと音を立てながら、ぎこちない動きでこちらに向かって歩いて来る。
ヅラスカヤの魔術か!? ベラマッチャは咄嗟に身構えると、鎧は一番近くに居たポコリーノの前で立ち止まった。
ポコリーノは用心深くゆっくり立ち上がり、鎧のあちこちを不思議そうに見回している。
すると突然、ポコリーノに向かって鎧が両腕を伸ばした!
「キエェッ!」
焦ったポコリーノの殺人パンチが鎧の顔面を直撃し、兜を吹っ飛ばしたが、そこにあるはずの頭が無い!
立ち尽くすポコリーノと鎧を見ながら、「やはり魔術か?」と思ったベラマッチャの耳に、不敵な笑い声が聞こえて来た。
「フッフッフ……」
声は明らかに鎧から出ている。身体を硬直させたまま見ていると鎧はガタガタ動き出し、兜が載っていた空洞部分から何かが飛び出した!
「ヒエェッ!」
スッペクタは驚きのあまり悲鳴をあげて椅子から転げ落ち、ヘンタイロスも腰を抜かして尻餅をついた。シャザーン卿も目を丸くしている。
「グッドアフタヌ~ン、ベラマッチャさん」
揺れる長大なリーゼントにペリカンの様に長い顎、姿を現したのは『カルロス・パンチョス』だった!
パンチョスは手際よく鎧を脱ぎ捨てると、ポコリーノをジロリと見た。
「誰が精神も難聴だって?」
パンチョスの喧嘩を売るような視線に、ポコリーノは跋が悪そうに作り笑いを浮かべた。
「よっ、よお~兄弟。今、お前の話をしてたんだ。退院した筈だってな」
適当な答えでお茶を濁そうとするポコリーノに、パンチョスは冷たい視線を投げ付け、ベラマッチャへ顔を向けた。
「ここへ来る途中、渡世人から聞いたぜベラマッチャさん。暴行族とやらを退治するんだって?」
「その件なら先程カタがついたよパンチョス君。彼が暴行族のリーダー、スッペクタ君だ」
ベラマッチャはパンチョスの怒りが自分に向かずホッとし、紅茶を一口啜るとスッペクタを指差した。
スッペクタは立ち上がってぺこりと頭を下げると、訳が分からないといった顔で椅子に座り直した。
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