第七話 Head On A Pole 其の3
カツラスキーは、陽光を浴びて光り輝く剃りあげた頭を右手で撫でると、空中に漂う魔ヅラを一つ掴んで話を続けた。
「K.G.B.エージェントの中で、魔ヅラを作る者を職人、それ以外の魔ヅラを操る者をカツラ使いと呼ぶ。魔ヅラを製作するカツラ職人の中でも、一級カツラ職人という最難関の国家資格を持つ、一流のカツラ職人にしてカツラ使いがヅラ師と呼ばれるのだ」
そう言うとカツラスキーは、手に持っていた魔ヅラをベラマッチャに向かって投げ付けた!
「げぇッ!」
「ベラマッチャさん!」
身体を仰け反らせ、間一髪で魔ヅラをかわしたベラマッチャの前に、パンチョスが躍り出た。パンチョスはギターを握り締めると、カツラスキーを睨みながら弾き始め、ベラマッチャに声をかけて来た。
「ベラマッチャさん、俺に任せとけ」
「フッフッフ……カルロス・パンチョス……。貴様のギターで私を殺れるかな? 魔ヅラ、真の威力を見せてやる!」
カツラスキーはニヤリと笑うと、空中に浮かぶ魔ヅラの中から一つを取り、己の頭に被せた! モジャモジャしたヘアスタイルの魔ヅラは、パンチョスが室内で指差した伝説の宮廷音楽家、ベントーベンの魔ヅラだ。
自分の頭に魔ヅラを被せるというカツラスキーの行動に、パンチョスは呆気に取られている。ベラマッチャたちも、カツラスキーの行動に首を傾げながらパンチョスとカツラスキーを交互に見た。
「ナニ考えてやがるんだ? 俺に勝てねえからって自殺するつもりか?」
「馬鹿め、これで貴様の死は決まったのだ」
カツラスキーの行動が理解できないパンチョスは、弦を弾きながら必殺のチャーミング・デスメタルを繰り出した!
「シャバダバダ~、分かるかなぁ……分かんねえだろうなぁ……。死ぬのはテメーだぜ……」
パンチョスの弾くゆっくりとした曲が、爆音ギターの音と共に突如スピードアップすると、カツラスキーは両手を忙しなく振り出したのだ!
すると、カツラスキーの両手の動きと共にパンチョスの弾くロックンロールが、爽やかなメロディーのワルツに変化したではないか!
「うおぉッ!」
なんという事か! カルロス・パンチョスは身体の自由を失ったが如く、その場で何度かクルクル回るとベラマッチャたちに向かい、今度はロックンロールを演奏し始めた。
「シャバダバダァッ!」
「げぇッ!」
音に弾き飛ばされたベラマッチャたちは地面に打ち付けられ、驚愕の表情でカツラスキーと困惑顔のパンチョスを見た。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません