第四話 Death,Agony and Screams 其の5
ボーイを先頭に階段を昇りながら振り返ると、年配の男はカウンター越しに受付の女を叱っている。女は泣いているのか、両手で顔を押さえながら何度も頷いた。
ベラマッチャは受付の女に同情し、前を歩くシャザーン卿に小声で文句を言った。
「キミィ、少々やりすぎではないかね? 受付のレディは泣いとるぞ」
「やりすぎじゃと? 馬鹿め。こうでもせねば敵に近づけぬわ」
シャザーン卿も小声で返すと、ベラマッチャは両手を広げて肩を竦め、無言で階段を昇って行った。
やがて最上階に到着すると、ボーイは鍵を取り出して階段の正面にある部屋の扉を開け、ベラマッチャたちを中へ案内し部屋を出た。
部屋の中は広く豪華で、六人が入っても窮屈さを感じない。ベラマッチャたちはフカフカのソファーに座ると、緊張を解すため雑談を始めた。
「ワタシ、びっくりしたわん。シャザーン卿ったら、予約を入れたなんて言い出すんだものん」
「まったく、『嘘つきは泥棒のはじまり』とはよく言ったもんだぜ。あんな大嘘ついといて逆ギレしやがるんだからな」
「フッフッフ……。今じゃさしづめ、『クレーマーは泥棒のはじまり』だな」
「フンッ! ノックアウト強盗たる余も、こんな初歩的な手を使いたくはないわい! じゃが貴様等、余のクレームのお蔭でこんな豪華な部屋にいられるんじゃ。感謝せい」
皆でシャザーン卿のクレームについて言い合い、和やかに雑談する中、ベラマッチャが今後の行動について話し始めた。
「スッペクタ君、股ドールの部屋を覚えているかね?」
「あぁ、一番奥の部屋だ」
ベラマッチャは頷くと、シャザーン卿に声をかけた。
「シャザーン卿、透明になる準備はいいかね?」
「いつでも大丈夫じゃ」
「では諸君、さっそく行動に移そう。面の用意をしたまえ」
ポコリーノはヘンタイロスの背中に括り付けてあるバックパックから面を取り出すと、パンチョスに手渡した。パンチョスは面をベラマッチャとヘンタイロスに手渡した。
「シャザーン卿、あんたの面はどうする?」
「ヘンタイロスに渡しておけい」
そう言うとシャザーン卿は、着ている服を脱ぎ始めた。上着とズボン、ブーツを脱ぎ、パンツと腹巻だけになったシャザーン卿は、パンツに手をかけると勢いよく脱いだ!
「オォッ!」
腹巻だけになったシャザーン卿の股間にブラ下がる馬並みの逸物を食い入るように見つめながら、ベラマッチャたちは思わず息を呑んだ。。
「ウフフッ……流石はシャザーン卿だわん」
「むぅ……。この死と隣り合わせの状況で、まったく玉が縮んどらんとは流石だな」
「驚くのはこれからじゃ」
シャザーン卿が両手を顔の前で交差させ、拳を握り気合を入れると、突然身体が消えた!
「うッ……うおぉッ……」
スッペクタは驚いて腰を抜かし、尻餅をついている。パンチョスは口を開けてシャザーン卿が居るであろう場所を見つめるスッペクタに声を掛けた。
「スッペクタ、これから大仕事が待ってるんだ。いつまでも馬鹿面を晒してるんじゃねえ。どれ、景気づけに一曲歌うか」
そう言うとパンチョスは、ギターを手に持ち弾き始めた。
「新しい馬鹿が来た~♪ 昨日の馬鹿だ♪ 驚きに口を開き♪ 馬鹿面晒せ~♪」
全員でパンチョスの歌を聴き終ると、扉の近くからシャザーン卿の声がした。
「スッペクタ、まずは貴様が扉をノックして中に入るんじゃ。余も近くに居るから心配せんでよい。行くぞ! 余について参れ!」
ベラマッチャたちは面を被ると部屋の扉を少し開き、廊下に誰もいないのを確認して出て行った。
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