第三話 Substitute 其の3
パンチョスはスッペクタを一瞥すると、部屋の隅から椅子を持って来てベラマッチャの横に座った。
「流石はベラマッチャさん。もう暴行族を始末したとは仕事が早えぜ。で、何で暴行族のリーダーが居るんだい?」
「むぅ、それが不思議な事件なのだ。暴行族は全員カツラを被っており、被っている間の記憶が無いらしい」
「カツラ? 禿が被るカツラかい?」
「そのカツラだよ、パンチョス君。そんな不思議なカツラの話を聞いた事があるかね?」
「被ると記憶が無くなる……。いや、聞いた事が無えな……」
パンチョスが腕を組んで考え込んでいると、シャザーン卿が口を挟んできた。
「これからポロスに向かい、ザーメインに聞くのが良かろう。パンチョス、貴様も来い」
ベラマッチャたちは旅の身支度を整えると、スッペクタを連れてポロスの街を目差した。ワグカッチからポロスまでは一日の距離である。
急ぎ足で旅する一行は、夕暮れ時に草原で夕食を済ませ、その場で野宿となった。
翌朝早く出発した一行は昼前にポロスの街に到着し、活気が戻ってきたポロスの街の人混みを縫うようにザーメインの家に向かった。
「ザーメイン、お邪魔するよ」
「おぉ、ベラマッチャたち」
ベラマッチャが扉を開けると、ザーメインは読んでいた本を置いて笑顔で出迎え、ベラマッチャたちを椅子に座らせた。
ザーメインは紅茶を淹れてベラマッチャたちに振舞うと椅子に座り、湯気の立つ紅茶を啜りながら話し出した。
「貴公等、世間話をしに来た訳ではなかろう?」
「むぅ、実はカツラについて尋ねたい事があるのだ」
ベラマッチャの話を聞いたザーメインは、紅茶を噴出して笑い出した。
「ワッハッハ! 何の話かと思えば、カツラじゃと? 貴公、三十歳を過ぎたばかりで、もう心配か? どこじゃ? 前か? テッペンか? ヒーッヒッヒ!」
笑いが止まらぬザーメインに、ベラマッチャは話し掛けるタイミングを掴めずにいたが、代わりにシャザーン卿が口を開いた。
「ザーメイン、禿の心配で来ている訳ではない。被ると記憶が無くなるカツラについて聞きたいのじゃ」
ザーメインの笑いはピタリと止み、やがて小刻みに震えながら振り向いた。
「なっ、何ぃ! 記憶が無くなるカツラじゃと!?」
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