夢幻の旅:第二十九話
しばらくの間、椅子に座ったまま天井を見ていたが、やはりというか、当然のことだが思考が停止してしまい何も考えることができない。
頭の中にあるのは『死』の文字だけ。
人は誰でも死ぬと分かっていながら、いざ自分 ...
夢幻の旅:第二十七話
駐車場から病院の前を通る道に出ると、東に向かって通勤ラッシュが終わった道路を走る。時間は朝十時過ぎ、交通量は少なく車は快調に走っていく。
やっと退屈な入院生活から解放されたためか、俺は自然と助手席に座る良美に話しかけて ...
夢幻の旅:第二十六話
ケースを開きスマホの画面を見ると、電池が残り三十パーセントを切っている。
この先何日かの入院生活を考えて少々焦り、充電用のケーブルを持ってきてくれたか聞いてみた。
「良美、スマホのケーブル持ってきてくれた? ...
夢幻の旅:第二十一話
――遠くから聞こえてくるサイレン。頭上に感じる人の気配。体に感じるのは冷たく硬い材質。
なぜか俺は寝ているようだが、動こうとしても体が言うことを聞かず、頭と右肩が痛い。
瞼まぶたを突き破って届く光を認識し ...
Autographic 第二十七話:病院
朝、目を覚ますと鮭を焼く良い匂いが漂ってくる。眠い目を擦りながら布団から抜け出し、匂いを辿りながら居間へ行くと、おじさんが囲炉裏で味噌汁を作っていた。
「おう秀人、起きてきたか」
「おはよう、おじさん」