Autographic:あとがき

「犬をいじめると狼が来るぞ!」
子供の頃、犬に追いかけられて石を投げつけながら家に帰ると、小鹿野町出身の祖母に決まって「狼が来るぞ」と怒られた。
昔は犬が放し飼いにされていて、野良犬か飼い犬かの区別は知って ...
Autographic 第二十九話:希望

採血が終わり、看護師さんが廊下のベンチに座っていた母さんを呼びに行く。僕がドアを見ていると母さんが入ってきて、榛沢先生が看護師さんが出した椅子に座るよう言う。母さんがバッグを持ったまま椅子に腰かけると、榛沢先生が話を切り出した。
Autographic 第二十五話:記憶

博物館の前にある土産物屋の横へ行き、木に繋いであった犬たちを駐車場に連れて行こうとすると、三匹の犬がいない。きっとおじさんが連れていったんだろうと思い、一人で駐車場へ向かった。
階段を降りながら料金所を見ると、おじさん ...
Autographic 第八話:川へ

母さんとおじさんが蕎麦を食べ終えると、お茶を飲みながらしばらく三人で雑談して店を出た。おじさんの子供の頃からの友達である蕎麦屋の主人が、女将さんと外まで出て笑顔で僕らを見送ってくれる。僕も主人と女将さんに挨拶して車に乗りこんだ。
Autographic 第七話:興奮

庭の隅にある、鉄でできた檻の中が二頭の犬の住処だ。僕が近づく気配を感じたらしく、ゴローとハナがワンワン吠えている。
庭にある植木の陰に隠れそっと顔を出すと、ゴローとハナは鉄格子に前足をかけ、二本足で立ちあがって尻尾を振 ...
Autographic 第六話:地犬

寝なきゃいけないけど興奮して眠れない。ニホンオオカミを調べ始め、午前一時を過ぎたところまで記憶があったが、目が覚めると朝になっている。僕はネットでニホンオオカミを調べながら、机で寝てしまっていたのだ。
ダイニングへ降り ...