創作長編小説

夢幻の旅

創作長編小説

 公園を出て丘を降っていくと、下に灯りが見えてくる。

 丘の前を通る四車線の道路に立ち並ぶ多数の外灯が、夕暮れが終わろうとしている世界を明るく照らし、道路を幻想的なまでに浮かび上がらせていた。

 道路に出ても、 ...

創作長編小説

夢幻の旅

創作長編小説

 良美が家を出ていった事実を受け入れられず、俺は唇を歪めながら右手に持ったメモをクシャクシャに丸め、ゴミ箱めがけておもいっきり投げ捨てた。

 病院にいたときから腹が鳴っており、体は食事を求めているものの心が受け付けてくれな ...

創作長編小説

夢幻の旅

創作長編小説

 あの水晶のチョーカーは今でも身に付けている。良美の手前、名前を彫ったタグは取ってしまったが、俺が気に入って作ったんだし毎朝身に付けることが習慣化してしまっていた。

 右手で涙を拭いながら立ち上がり、夕闇の中を駐車場まで歩 ...

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夢幻の旅

創作長編小説

 風呂から出た後、スマホはダイニングテーブルの上に置いたままだったし、当然パソコンも使ってない。それに、自分で自分のメールアドレスに空メールを送信する理由などないだろう。

 左手に持ったスマホを見つめてるうち、なんだか薄気 ...

創作長編小説

夢幻の旅

創作長編小説

 二十秒ほどで勢いよくお湯から頭を出し、体が温まったところで風呂を出てダイニングへ向かうと食欲をそそる匂いが漂ってくる。

 キッチンにある冷蔵庫を開けて缶ビールを一本取り出し、ダイニングテーブルにスマホを置いて椅子に座り、 ...