創作長編小説

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 まるで道案内するかのように僕の前を歩く野犬。

 後ろから観察すると、毛色や体型からハスキー犬と四国犬が混じったような雑種犬と思われるが、長くて太い尾の先は切断されたように丸く、先端の毛は黒い。ピンと立った耳は地犬や甲斐犬 ...

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 熊は後ろ脚で立つのを止め、再び前脚を地に付けて川の中を僕の方に向かってゆっくりと歩いてくる。野犬を見ると、熊を睨んだまま歯をむき出して唸り声をあげ、熊を威嚇していた。

 川のせせらぎと体をすり抜けていく風だけが時の流れを ...

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 ――暗闇の中、背の高い草をかき分けながら歩き続けている。

 樹木に遮られて星明りも届かない山の中を、もうどれくらい歩いたのだろうか。後頭部からは血が流れ、痛む背中と右脚を引き摺りながら歩いていく。まるで、空襲後の焼け野原 ...

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 横も後ろも正面も、周りは樹木が生い茂り薄暗い。よく晴れた五月の午前中だというのに、太陽の光が半分くらいしか届かないようで肌寒さすら感じる。

 僕の前にはおじさんと新井さん、その先にはゴロー、ハナ、ジョン、キースの四匹が歩 ...

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 小さな軽自動車の後部座席に座り、悪路に揺られて行く。僕の後ろではゴローとハナ、新井さんの二匹の甲斐犬が居心地悪そうにおとなしくしている。

 ふと、新井さんの甲斐犬の名前を知らないことに気づき、おじさんと喋っている新井さん ...

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 翌朝、起きてすぐおじさんが作ってくれたおにぎりを食べ、薬を何錠も飲んで歯磨きと洗顔を済ませて着替え、猟で使う道具を軽ワゴン車に積み込み、ゴローとハナを檻から出して車の荷室へ乗せて僕も車に乗る。

 おじさんが運転席に着座し ...

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 おじさんの家の裏手にある坂を下り、三分くらい歩いたところに赤平川は流れている。初夏の日差しを浴び、緑が濃くなっていく鬱蒼とした森を抜けると、薄暗い視界が急に開け明るく太陽が輝く川へ出た。

 ゴールデンウィークも終わった五 ...

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 母さんとおじさんが蕎麦を食べ終えると、お茶を飲みながらしばらく三人で雑談して店を出た。おじさんの子供の頃からの友達である蕎麦屋の主人が、女将さんと外まで出て笑顔で僕らを見送ってくれる。僕も主人と女将さんに挨拶して車に乗りこんだ。

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 庭の隅にある、鉄でできた檻の中が二頭の犬の住処だ。僕が近づく気配を感じたらしく、ゴローとハナがワンワン吠えている。

 庭にある植木の陰に隠れそっと顔を出すと、ゴローとハナは鉄格子に前足をかけ、二本足で立ちあがって尻尾を振 ...

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 寝なきゃいけないけど興奮して眠れない。ニホンオオカミを調べ始め、午前一時を過ぎたところまで記憶があったが、目が覚めると朝になっている。僕はネットでニホンオオカミを調べながら、机で寝てしまっていたのだ。

 ダイニングへ降り ...