創作長編小説

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「良美、売店で水を買ってきてくれないか」

 俺はベッドに横になったまま、クローゼットに荷物を収納している良美に向かって、水を買ってきてくれるよう頼んだ。

 昨夜からの水分補給が朝食の味噌汁と水だけのためか、喉が ...

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 ――救急車の通過を知らせる、騒々しいアナウンス。

 けたたましく鳴り響くサイレンに叩き起こされて目を開くと、カーテンで仕切られた病室のベッドの上で寝ていた。

(そうだ、店で倒れて入院させられたんだ……)

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「良美! 脚立きゃたつに上ってくれ!」

 一階の屋根に付いている雨樋あまどいを外し終えた俺は、季節外れの大雪で壊れた家の雨樋を修理するため、良美に手伝ってもらって新しい雨樋に交換しようとしていた。屋根に付いていた雨樋は雪の ...

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 ――遠くから聞こえてくるサイレン。頭上に感じる人の気配。体に感じるのは冷たく硬い材質。

 なぜか俺は寝ているようだが、動こうとしても体が言うことを聞かず、頭と右肩が痛い。

 瞼まぶたを突き破って届く光を認識し ...

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 人目に触れないよう店の裏側へ回り、周囲に人がいないことを確かめてから胸のポケットにある煙草とライターを取り出し、左手に持った煙草の先に火を点ける。

 ライターを胸のポケットにしまいながら煙を深く吸い込み、吐き出しながら煙 ...

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 公園を出て丘を降っていくと、下に灯りが見えてくる。

 丘の前を通る四車線の道路に立ち並ぶ多数の外灯が、夕暮れが終わろうとしている世界を明るく照らし、道路を幻想的なまでに浮かび上がらせていた。

 道路に出ても、 ...

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 一階に降り、玄関を出て庭の奥にある犬小屋が目に入った途端、昨夜からジョニーに餌えさを与えてないことに気づき、慌てて容器を持ってドッグフードストッカーへ小走りに駆けていく。

 容器いっぱいにドッグフードを取り出し、ジョニー ...

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 スマホを枕元に置き、目を閉じてもの思いに耽ると、俺の脳裏に良美の顔と蛍の顔が同時に浮かんでは消えていく。良美は帰ってきてくれるのか、そのことでメシも喉を通らず、憔悴する俺の姿を見た蛍はなんて言うのだろうか。

 開け放った ...

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 良美が家を出ていった事実を受け入れられず、俺は唇を歪めながら右手に持ったメモをクシャクシャに丸め、ゴミ箱めがけておもいっきり投げ捨てた。

 病院にいたときから腹が鳴っており、体は食事を求めているものの心が受け付けてくれな ...

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 昨日の、希望が少しだけ混じった想像が不可思議な現象と共に絶望に変わり、奈落の底に叩き落されたまま床に就いたが、良美と蛍のことを考えているうちに寝てしまったようだ。

 朝の光と小鳥のさえずりで目を覚まし、リビングへ行ってみ ...