Autographic 第六話:地犬

創作長編小説

 寝なきゃいけないけど興奮して眠れない。ニホンオオカミを調べ始め、午前一時を過ぎたところまで記憶があったが、目が覚めると朝になっている。僕はネットでニホンオオカミを調べながら、机で寝てしまっていたのだ。

 ダイニングへ降りていくと既に和幸が朝食を食べている。急に昨日のゲームのことを思いだしたが、ここで怒ると小鹿野へ泊りに行けなくなると思い、平静を装いながら席に着いた。

「お兄ちゃん、小鹿野のおじさんの家に泊まりに行くの? いいなぁ、僕も行きたい」

「お前は学校があるだろ。僕も学校へ行きたいけど、療養のために小鹿野へ行くんだ」

「ちぇっ! 僕も病気にならなぁ」

 和幸の言葉を聞き、新聞を読んでいた父さんが怒った口調で口を挟む。

「ふざけたことを言うんじゃない。お兄ちゃんは病気を治さなくちゃいけないから轟の家でのんびり過ごすんだ。人間、健康じゃないと勉強もできなくなるんだから、和幸はお兄ちゃんの分も勉強しなさい」

「和幸が修司おじさんの家に行くのは夏休みになってからね。ちゃんと学校へ行って勉強しないと夏休みになっても連れて行ってやらないから」

「は~い」

 真面目で頭の固い父、秀幸と反対に大雑把な母の和美。父さんと母さんから釘を刺され、返事をしながら残念そうな顔でトーストにバターを塗る和幸を横目で見ながら、僕は一番に朝食を食べ終わり、泊り支度をするため足早に二階の自室へ戻った。

 着替えを用意していると、父さんと和幸が立て続けに家を出ていく物音が聞こえる。続けて母さんが掃除機をかける音や洗濯機を使う音が聞こえ、やがて音が聞こえなくなった頃、僕は手持ち無沙汰で待ちきれない状態になってしまったため、コーヒーを飲みながら出発するのを待つことにした。

 荷物を持ってリビングへ行き、キッチンにある食器棚からマグカップを取り出してインスタントコーヒーを入れ、お湯を注いでリビングのソファーに座り、テレビを見ながらコーヒーを飲んでいると、母さんが「行こう」と顔を出したので車に荷物を積み込む。

 助手席に乗りシートベルトをすると、母さんが車を発進させた。

 車はゆっくり動き始め、庭から道路に出ると徐々に加速していく。小鹿野町まで一時間、母さんと白血病治療や学校のこと、高校進学の話をしながら車は平野から山道へ入り、皆野町から秩父市に出て、とうとう小鹿野町へ。

 車は警察署の前を通り過ぎて細い道に入り、川沿いの山道を上がっていくと轟家が右側に見えた。

 車が庭に入っていくと、ゴローとハナが吠えているのが聞こえてくる。車が停まり、早速ゴローとハナのところへ行こうとしたら、玄関の扉が開きおじさんが家から出てきた。

「おぅ和美、秀人を連れてきたか」

「おじさん、こんにちは」

 母さんと共に車を降り、おじさんと母さんが話しはじめたのを見て挨拶もそこそこに、僕は一人ゴローとハナのところへ向かった。

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