Heaven Sent:第六話

創作長編小説

 退屈な授業がやっと終わり、再び生徒たちのお喋りや笑い声で賑やかになる教室を出て、俺とゴリと小和田は理科室へ向かった。まーちゃんとケンは教室掃除、そして運が悪い事に高田とチョーケンはトイレ掃除の週だった。ゴリと小和田と喋りながら理科室へ向かい、早く掃除を終わらせてバレー部の部室へ行かなくては。

「小和田は机、ゴリは窓ガラス、俺は床掃除でいこう」

「オッケー! 里見、ビーカー割るなよ!」

 ゴリの言葉に、俺は笑いながら頷いた。理科室掃除じゃ油断は禁物だ。試験管一本でも割ってしまえば職員室に呼び出されて大目玉をくらう。ましてや俺たちのクラスの担任は理科の大島だ。大東亜戦争の時に南方に出征し、武器弾薬が尽きて食料が無くなってもニシキヘビを食らって戦い続けた、定年間近の老教師。大正生まれで頑固一徹、不良たちが「丸眼鏡の恐怖」と恐れる、怒らせたら学校で一番怖い先生である。

 丸眼鏡の恐怖、大島先生に呼び出されないよう慎重に理科室全体の床掃除を手早く行い、先に掃除を終えていた小和田とゴリと共に理科室を出てバレー部の部室へ向かった。ケンとまーちゃんとチョーケンがバレー部っだったこともあって俺たちはバレー部の部室に行くことが多かったし、バレー部の三人が部室の鍵を職員室で簡単に受け取れるからだ。

 我が校のバレー部は県大会予選で、春高バレーで全国優勝するような隣町の強豪高校に何人も選手を送り込んでる中学校と1回戦で当たりストレート負け。三年生は引退し、バレー部に所属する同級生たちは、たまに部活に顔を出して下級生の指導をするくらいになっていた。チョーケンが職員室へ部室の鍵を取りに行くことになってたが、そういった状態だったので簡単に鍵を借りられるはずだ。

だが部室の前には、まーちゃんとケン、高田が立っており、中を伺うような素振りでいる。俺たちが近づくと一斉に振り向き、三人とも右手の人差し指を口に当てた。

「なんで入らねえんだよ?」

 不思議に思った俺たち三人を代表するかのような小和田の問いに、ケンが小声で答えた。

「田中がいる!」

 バレー部の顧問でヒステリー女の田中先生は、俺たち七人を目の敵にする嫌な女教師なのだが、どうやら田中の機嫌が悪いようでケンが両手の人差し指を頭の横で上下させている。ドアの向こう側から聞こえてくるのは、聞いてるだけで頭が痛くなるような田中のヒステリックな叫び声だけだ。眉間に縦皺を寄せて誰かにヒステリーを炸裂させてるのが簡単に分かる金切り声だった。

「あれ? チョーケンどうしたよ?」

 チョーケンがいないことに気づいた俺が小声で問いかけると、ケンと高田が部室のドアを指した。最悪なことに、どうやらヒステリーを炸裂させてる相手はチョーケンのようだ。俺は部室に向かって十字を切り、小声でアーメンと唱えてからプールの方角を指をさし、みんなでソロリソロリとゆっくり歩いてバレー部の部室から離れた。

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