Heaven Sent:第九話

創作長編小説

 自宅の前まで行くと、庭に車が停まってない。ラッキーなことに母は買い物にでも出かけてるようである。今のうちにカメラを確保しておこう。これ幸いとばかり、家に入った俺は真っ先にリビングへ行き、戸棚に置いてあるカメラを取って二階にある自分の部屋へ入った。

 エアコンなんか付いてない部屋のドアを閉め、窓を全開にしてフィルムを確認すると、まだ6枚しか使ってない。24枚撮りフィルムが入ってたはずだし、心霊写真の撮影ならみんなで何枚かづつ撮って終わるだろうから、新しいフィルムを買う必要もないだろう。

 近所のコンビニへ走りフィルムを買う必要がないと分かった俺は机の上にカメラを置き、ズボンのポケットに入っている靴下を取り出して服を着替えると、ベッドに横になって今夜家を抜け出すための理由を考え始めた。もうすぐ夏休みとはいっても出かける時間が夜中だ。遊びに行くというのは不味い。先々週の「久下塚の家で一緒に期末テストの勉強をする」という理由は簡単にバレた。中間テストが終わったときは栗崎と小和田と共に勉強するということで家を出たが、三人でバス停に集まって無駄話しをしてるところ通りかかったパトカーの警官に補導され、両親に大目玉を食らった。

 窓を開けてもまったく涼しくならない部屋の中、ベッドでゴロゴロしながら全身汗まみれになって考えてみても暑さのためかアイデアが出てこない。開け放った窓から見える憎たらしいくらい眩しい真夏の太陽と入道雲を眺めてると、だんだんイライラしてくる。太陽の熱で室内で蒸し焼きにされるような状況の中、喉か乾いたので水を飲もうと階段を降りたとき、俺の頭の中で電球が点灯するようにアイデアが閃いた!

 ケンたちと違って部活に入ってない俺と小和田は、部活動を行ってない同じクラスの連中と交代で花壇の手入れを手伝う係にされていたのだ。大島先生から花壇の手入れを手伝うよう言われてるのは両親も知っている。夜になってからでも、小和田と二人で花壇に水をやると言って出て行けば親も疑問に思うまい。キッチンの蛇口捻り、勢いよく出てくる水をコップに注いでいっき飲みすると、俺は小和田の家に電話をかけた。

「もしもし、里見ですけど」
「里見か。どうしたんだ?」
「小和田、今夜はなんて言って家から出るんだ?」
「それ考えてたんだけど、いい理由が見つからねえ。お前は?」
「俺はお前と二人で花壇に水をやるって言って出るつもりだ」
「そうか! 花壇に水をやるんだったら夜遊びとは違うぜ! 相変わらず悪知恵が冴えてやがる!」

 悪知恵が冴えてるという小和田の言葉に納得できないものを感じたが、お互い口裏を合わせて花壇に散水するという理由で家を抜け出すことにした。これで二人そろって堂々と心霊写真を撮りに行けるだろう。小和田との電話を終えた俺は勉強する気も起らず、晩飯まで読みかけの小説を読んで過ごすことにした。

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