Heaven Sent:第八話

創作長編小説

 ゴリと高田とまーちゃん、ケンとチョーケン、そして俺と小和田が帰る方向が一緒だったので同じ方向へ帰る者同士で自然と固まり、校門に向かって話しながら歩き始めたときだった。

「コラ~ッ! 花壇の横に机を積みやがったのはテメーらだな~っ!」

 体がビクンとし、皆立ち止まった。頭上から降り注ぐセミの鳴き声と部活動中の喧騒の中、男の怒鳴り声と共にバタバタ走り寄ってくる足音が聞こえる。振り返っちゃいけない。振り返ればランニングシャツに作業ズボン、そして麦藁帽子を被った「丸眼鏡の恐怖」が、タオルを首に掛けた姿で顔を真っ赤にして走ってくる姿が見えるはずだ……。

 だが、俺たち全員、立ち止まったまま条件反射的に振り返ってしまった。

「げぇっ!」
「うぉっ!」
「ヤべぇっ!」

 俺たちの眼前には、想像どおり農家のおじさんと見紛うような格好の大島先生が、顔を真っ赤にしてシャベルを振り上げながら向かって来ている。大島先生が目に入った瞬間、全員脱兎の如きダッシュで校門に向かった。

「本田~っ! 里見~っ! 高田~っ! 久下塚~っ! 小和田~っ! 栗崎~っ! 富田~っ! 待て~っ! この七人のボンクラどもがぁ~っ!」」

 俺たちは逃げた。必死で走った。捕まったら最後、職員室に監禁されて恐怖の時間を過ごすことになる。「丸眼鏡の恐怖」の異名は伊達ではない。もう部活動の喧騒もセミの声も聞こえなくなり、同じ方向に帰る奴と一緒に無言で走り続けた。校門を出たところでケンとチョーケンが右へ行き他の奴は左へ、そして俺と小和田がT字路を右へ曲がり、ゴリと高田とまーちゃんが真っすぐ走った。

 学校と自宅のある住宅街の間は田圃や畑がたくさん残っている。田圃の中の一本道に入り、俺と小和田はやっと足を止めた。四百メートルは全力疾走しただろうか、俺も小和田もゼーゼーして声が出ない。フラついた足取りで小和田とともに用水路へ向かい、畦道に腰掛けて靴も靴下も脱ぎ去って足を水の中に入れた。

「はぁ……死ぬかと思ったぜ」
「ああ、ヤバかったよな……」

 丸眼鏡の恐怖から解放されたためか、俺も小和田も口数が少ない。あまり話もせず、足を用水路に着けながらダラダラ時間が過ぎるままいたが、「もう帰ろう」という小和田の言葉に頷き、靴下をズボンのポケットにねじ込んで靴を履き、俺たちは二人でトボトボ歩き始めた。

「今夜は遅れないように、十一時半にお前んちに迎えに行くよ」

 小和田の家の前まで来たので声をかけ、お互い右手を上げて別れると俺はカメラを確保することを考えながら、夏空に湧き立つ入道雲に今夜感じるであろうスリルの予告編を映写しながら、汗だくになり家に向かって歩いていった。

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