Heaven Sent:第四話

2017年12月20日長編小説

 中学三年生の夏、一学期の期末テストが終わり授業が午前中だけになってから数日、茹だるような暑さの中登校すると、教室は大騒ぎになっていた。仲の良い友達たちが五人集まり、高田という奴が身振り手振りを交えて大声で何事かを話している。プロレスの話でもして盛り上がってるのかと思い、俺も連中の輪の中に入っていった。

「なに話してんだよ?」

「お~里見! おまえ新聞見た!?」

 全員が一斉に俺を見た。ケン、小和田、チョーケン、ゴリ、そして熱く話していた高田。新聞なんか読んでる訳ないだろう。あと五分で授業が始まるのだ。寝過ごして遅刻しそうになり、慌てて家を飛び出してきたのに。

「金曜の猪木とタイガー・ジェット・シンの試合の話じゃないのか?」

 この頃、プロレスがブームだった。タイガーマスクというプロレスラーが彗星の如く現れてあっという間に人気レスラーになり、男の子は皆プロレスを見ていた時代である。小林邦昭がタイガーマスクのマスクに手を掛けただけで、スタン・ハンセンが「大巨人」アンドレ・ザ・ジャイアントをボディースラムで投げただけで男の子たちは興奮したものだ。俺たちも例外ではなく、「ハルク・ホーガンのアックスボンバーとスタン・ハンセンのウエスタン・ラリアットは、どっちが威力があるか」なんて話をしたり、テリー・ファンクがアブドーラ・ザ・ブッチャーにフォークで血だるまにされた場面を、プロレス技をかけながら真似したりしていた。

 俺の問いに、興奮しているケンが下敷きで顔を扇ぎながら頭を横に振る。

「違う違う! 高田の話を聞いてみろよ! 高田んちの向かいに神社があるだろ? あの神社でホームレスのおっさんが自殺したって新聞に載ってたんだよ!」

「マジ!?」

 驚く俺に、高田が喋りはじめた。

「土曜の夜九時くらいから凄かったぜ! パトカーが何台も来て救急車も来てさ! もう近所中大騒ぎだったぜ! うちの父ちゃんが警官に聞いたんだけど、ホームレスのおやじが神社の境内にある木で首吊り自殺してるのを神主が見つけたんだって。神主が腰を抜かして驚いて、慌てて警察に電話したらしいぜ!」

 下敷きで顔を扇ぎながら話を聞いていたチョーケンと小和田とゴリが、高田の話を遮った。

「それでよ、いま話してたんだけど、みんなで神社へ行ってみないか?」

「もしかしたら、幽霊が見れるかもしれないぜ」

「ポルターガイスト現象とか不思議なことが起こるかもしれないだろ?」

 なに言ってんだ、こいつ等は。人が自殺した現場に行こうってのか? 俺が呆れた顔をして三人を見ていたら、ケンが喋りはじめた。

2017年12月20日長編小説