第二話 Big Women 其の1

2017年11月8日オカマ地獄変

 ヘンタイロスたちが料理を食べている頃、賭場で捕まったベラマッチャは舐め犬として稼ぐべく、熟女向け風俗店に連れて行かれていた。シャザーン卿の不始末とはいえ、渡世人として歩み始めたベラマッチャには一応の覚悟ができている。連れ立って賭場へ行き、相方が賭場荒らしをすれば自分も只ではすまない。シャザーン卿の事は恨めしく思うが、相方の不始末は己も償う。これは渡世に生きる者の基本である。

 賭場の若い者が店主と思しき初老の男と話をしている最中、ベラマッチャの脳裏にシャザーン卿の顔が浮かんでは消える。憎々しい顔と丁髷頭に唾を吐きかけてやりたいが、今は自分の身がどうなるのかが気掛かりである。居心地が悪そうに俯きながら様々な考え事をしていたベラマッチャの耳に、男の声が入ってきた。

「金貨三百枚! 稼げる舐め犬だって金三貨百枚稼げる奴は少ないんだ! それにほとんどの男は金貨百枚も稼げば借金が終わるか死んじまう!」

「親父、こっちは何も全額回収しようって思ってる訳じゃねえ。このチビが金貨三百枚も稼げるなんて、最初から考えちゃいねえよ。なんとか金貨百枚、生かさず殺さずで稼がせてくれ」

 ベラマッチャが正面に座っている男を見ると、男は腕を組んだまま考え込み始めた。どうやら二人の男はベラマッチャが舐め犬で稼ぐのは無理だと思っているらしい。暫く考え込んでいた店主と思しき男はクワッと目を見開くと、ベラマッチャを連れてきた若い男に向かって言い放った。

「いいでしょう。あんたのところの親分には何かと世話になっている。金貨百枚、稼げるか責任は持てんが、やらせるだけやらせてみましょう」

「流石はポロス一番の舐め犬店、『ドッグファイト』の店主だ。トップブリーダーの腕前を発揮して貰えると助かるぜ。コイツの稼ぎは月末に集金に来る。おいチビ、親父の言う事を聞いてしっかり稼ぐんだぞ」

 賭場の若い男はベラマッチャに声を掛けると立ち上がって店主と握手を交わし、部屋を後にした。ベラマッチャは男の背中を目で追い、ほどなくして店主に顔を向けると、男は下を向き両手で頭を抱えている。先程の会話もそうだが、目の前の店主の態度を見ているとベラマッチャは自身の男としての魅力を完全否定された気がしてならず、少しイラついた様子で店主に声をかけた。

「キミィ、君は僕がこの業界でやっていけんと考えとる様だが、その根拠の無い考えはいったいどこから来るのかね?」

 店主は頭を抱えながら目だけでベラマッチャの顔を見ると、舌打ちして面倒くさそうに呟いた。


2017年11月8日オカマ地獄変