第八話 Give It Up 其の3

2017年11月8日カツラ大戦争

 シャザーン卿は己が上に載っているヘンタイロスを睨むと、身体を退けようと苦しそうにもがき、冬眠から目覚めた蛙が地中から這い出て来るかの様な格好でヘンタイロスの圧迫から脱出した。

 肩で息をしながら墓穴をよじ登ってきたシャザーン卿は、腰の鞭に手を掛けると、墓穴の中で起き上がろうとするヘンタイロスを再び睨み、その背に鞭を振るい始めたではないか!

「この不埒者めがッ! 余の上に載るとは何事じゃ!」

「あぁッ! ヒイィ……」

 聞いているだけで痛くなりそうな鞭の音とヘンタイロスの野太い喘ぎ声が重なり、墓穴の周りは何とも形容しがたい空気に包まれ始めたのでベラマッチャたちは顔を見合わせ、墓穴から少し離れた丈の短い草が生い茂る場所へ移動して腰を下ろした。

「まったくスキモノだぜ、あの二人は」

 怒り狂い鞭を振るうシャザーン卿を横目で見ながら、ポコリーノが呆れた様に呟くと、横に居るパンチョスがギターを取り出した。

「一曲いくかい?」

「むぅ、頼むよパンチョス君」

「フッフッフ……」

 パンチョスはギターを掻き毟る様に弾き轟音を奏でると、即興の曲に合わせて歌い始めた。

「私の~♪ お墓のな~かで~♪ イカないでください~……♪」

 パンチョスはギターに合わせ、明日はどうなるか分からない渡世人暮らしを忘れるかの様に歌っている。ベラマッチャとポコリーノも、ともすれば殺伐となってしまいがちな心に平安を取り戻そうと、目を閉じて歌に聴き入った。

 ベラマッチャは歌を聴きながら、ふと故郷の風景を思い出した。草の匂いでいっぱいの大草原、その上を吹き抜ける風、遠くに見えるキワイ山……。

 脳裏に浮かぶ、家族や友達との思い出が詰まった故郷の風景にベラマッチャは少々感傷的になり、涙が流れ落ちそうになるのを堪えるため、シャザーン卿に目を向けた。


2017年11月8日カツラ大戦争